まず1冊目は、ジェフ・ペティ著、緒方広明監修、岡崎善弘訳の『科学的エビデンスに基づく最適の教え方 実践ガイドブック』(東京書籍)です。タイトルには「教え方」とありますが、これは学ぶ側にとっても非常に示唆に富む一冊です。というのも、「効果的に教える方法」を裏返せば、それはそのまま「効果的に学ぶ方法」になるからです。
著者のジェフ・ペティ氏はイギリスを代表する教授法の専門家で、膨大な学術研究、教師たちの経験、そして実践知の3つを組み合わせて、教室で本当に使えるアイデアを提示しています。
そして注目していただきたいのが、ここで紹介されている「分散学習」「検索練習」「精緻化」「交互配置(インターリーブ)」といった概念です。実はこれらは、文部科学省が近年公表している「個に応じた学習過程の充実について」などの検討資料の中でも、「認知心理学の知見に基づく効果的な学習方略の例」として明記されているものと重なっています。つまり、国の教育政策を議論する場でも、まさに本書が扱っているような科学的な学習理論が土台になりつつあるということです。
「なんとなく」ではなく、「エビデンスに裏付けられた学び方を知りたい」という方に、まず手に取っていただきたい一冊です。東大生の中でも、認知心理学ベースの学習法を意識している人は年々増えている印象があり、その源流をたどると必ずと言っていいほど、こうした書籍に行き着きます。
2冊目は、堀田秀吾先生の『疲れ切った人のための勉強法』(東洋経済新報社)です。
社会人になってから資格試験や語学の勉強に取り組もうとしても、仕事や家事で疲れ果てて、机に向かう気力すら残っていない――そんな方は、決して少なくないはずです。私自身、受験生を指導するなかで、「気力の総量」が学習成果を大きく左右することを痛感してきました。
本書の魅力は、単なる根性論や「気合を入れれば頑張れる」といった精神論に走らず、「疲れているという前提」から出発している点にあります。堀田先生は明治大学の教授であり、言語学だけでなく脳科学や心理学など、80校以上の大学の研究知見を横断的に紹介できる稀有な書き手です。本書でも、疲労が学習にどう影響するか、どうすれば少ない気力で最大の効果を出せるのかを、科学的なアプローチで丁寧に解説してくださっています。
東大生の中には、もちろんやる気にあふれていて無限のモチベーションで勉強に臨んでいる人もいますが、逆にそうではなく「無理をしない勉強法」を上手に取り入れている人も多くいます。長時間机に張り付くのではなく、コンディションを整えながら学びを継続する――そんな「持続可能な勉強スタイル」を模索している方には、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。「頑張れない自分を責める」のではなく、「頑張れない前提で、どう成果を出すか」を考えるヒントに満ちています。



