利益を追うより、お客さんに喜んでもらうことがふたりの原動力。一徳さんは「やっぱりおいしいと言ってもらえることが何よりのやりがい」と話し、ユリ子さんも「昔、通ってくれた九大生が遠くに引っ越しても、子どもや孫を連れ来てくれるのが本当にうれしい」と目を細める。
近年は地元のテレビだけでなく、YouTubeやSNSでやおきを紹介する人が増え、若い世代や海外からの来店客も目立つようになった。昨年、全国放送のテレビ番組で取り上げられた際は、「店の前に30人以上の行列ができて本当にビックリしました」と一徳さん。どんなに忙しくても「取材は都合がつく限りお受けしています。お断りするような立場じゃありませんから」と謙虚だ。ユリ子さんは「店を知って、わざわざ足を運んでくださるのがありがたい」と笑顔を見せる。
実は、一徳さんは数年前、指の神経の病気を発症して手術をうけた。完治の見込みはなく、今も痛みで目が覚める日があるという。それでも「店をやめたいと思ったことは一度もありません」と言い切る。
「おばあちゃんも85歳になって、いつまでふたりで続けられるかは正直分かりません。設備は古くなっていますし、子どもたちに継いでほしいと言ったこともありません。店の設備か自分の身体が使えなくなるその日まで、やおきを続けていくつもりです」
85歳でも会計は“暗算”
平日にもかかわらず、店にはひっきりなしにお客さんがやってくる。早朝には出勤前のサラリーマンが「週に一度ここで買うのが楽しみ」と立ち寄り、常連たちは「どれも安いのに、全部ちゃんとおいしいの」「おばあちゃんの笑顔を見るとホッとする」という。
ユリ子さんは控えめながら温かい笑顔でお客さんを迎え、暗算で会計する。
市外から来たママ友2人は「テレビで観て、ずっと気になってたんです」とユリ子さんに話しかけ、「インスタで知って来てみました」という大学生も。年齢も住む場所もさまざまな人たちが、この小さな店では自然と笑顔になる。

