どんな仕事も慣れるまでが大切だ、とよく言う。慣れてくれば、最初は難しかったことも、楽にこなせるようになってくる。自分が未熟なうちは、熟練した人の仕事を見て、「ああ、自分も早くああなりたいなあ」とあこがれるものだ。
一人前と呼ばれるようになってくると、ぱっと見ただけでも、それらしくなってくる。寿司職人は寿司職人っぽくなるし、警察官は警察官っぽくなり、ミュージシャンはミュージシャンっぽくなる。性格や態度や雰囲気がその職業らしくなるのだ。もとは生卵だったのが、ゆで卵、目玉焼き、スクランブルエッグなど、特定の形に定まっていくわけだ。
多くの場合、それは成長であり、嬉しいことだ。しかし、その仕事をしたかったわけではない場合には、悲しく感じることもある。たとえば、親の期待や事情で、望まない道に進まざるを得なかった場合、だんだんその役割に適した人間になっていく自分がむしろ悲しいかもしれない。それらしく見えてくることが嫌かもしれない。
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