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「金運にしようかな」
「恋愛運も気になる……!」
紫陽花の季節を迎えた、鎌倉の小町通り。
観光客でにぎわう和菓子店の店先で、そんな会話が聞こえてくる。
大仏の顔をかたどった焼き菓子「幸せをよぶ大仏さま焼き」を選んでいるのだ。
健康運、人気運、金運、美人運、仕事運、恋愛運。
6種類の“開運フレーバー”から好きな味を選べるユニークな仕掛けと、手のひらサイズのかわいらしいたたずまいが話題を呼び、繁忙時には1日1000個近く売り上げることもある看板商品である。
このヒットを生んだのは、老舗和菓子店ともや鎌倉小町店の二代目夫婦だ。
大仏さま焼きの誕生背景には、伝統の味を守る夫と、新しい風を吹き込む妻、ふたりの視点が重なり合う店づくりがあった。
二代目夫婦が引き継いだ、小さな和菓子店の悩み
大仏さま焼きが誕生する前、「ともや」は昔ながらの和菓子屋だった。
創業は1981年。先代の頃は、酒饅頭やお団子、わらび餅などを販売し、地域にも親しまれてきたが、時代の変化とともに客層やニーズも変わっていった。
転機が訪れたのは、二代目・南祐介さんが店に入った頃だ。
「当時は人手不足もありましたし、売り上げも決して順調とは言えませんでした」
そう振り返るのは、妻の亜実さん。家業を手伝うなかで、店の課題を間近に見ていた一人だ。
和菓子屋に生まれ育った祐介さんは、出会った頃は逗子の飲食店で働いていたが、家業を継ぐのはごく自然な流れのように見えたという。

