そう語る伊藤さんは、沼袋は家賃が安い分、食材にお金をかけられると言う。安い家賃は街の特性を、店の品質に変えるための原資でもあるようだ。
店内には、有名な漫画家、海外の人気VTuberのサインなども飾ってある。ロケで訪れた海外VTuberの総フォロワーは1000万人規模だったという。SNSで話題になり、来日して成田に着いたあと、その足で沼袋の店へやってくる外国人もいるという。
店の肉は吉祥寺の「肉山」と同じルートで仕入れているとのこと。分厚くてジューシーなハラミや脂ののったホルモンは口の中で溶けていくようでとても美味しかった。
地元の人間はここを「とかいなか」と呼ぶ
街のことを知りたければ、古くから地域で営業している商店に聞くのが定石だ。特に精米店は、個人宅や他の商店への配達などもやっているので、街について特に詳しい。
「伊藤精米店(中野区沼袋4-26-14)」は沼袋駅から、平和公園通りを北に数分歩いた場所にある。1951年から営業する老舗だ。店主の伊藤武夫さんは3代目となる。客対応に忙しいなか、話を聞かせてくれた。
「ついさっき、海外赴任から帰ってきたというお客さんが来店したんですよ。昔このあたりに住んでいて、当時よく通っていた店を探したんだけど、残念ながらなくなっていたって。それでたまたま当店に寄ってくれたんですけど、話を聞くと、うちのスタッフの同級生だってことがわかった。嬉しくなっちゃってねぇ。
どう言えばいいのかな、渋谷とか新宿のど真ん中じゃ、こういうことはあんまりないような気がするんです。私たち地元の人間は沼袋のことを“とかいなか”って言っているんだけど、都会でもあり田舎でもあるという意味ね。長く地域に住んでいる人が、その地域の商店でアルバイトをして、かつての旧友に会う。沼袋という田舎っぽい街だからこそ、そういうことが起こるような気がしています」(伊藤さん)

