伊藤さんは沼袋のまちづくりにも力を入れている。鉄道の地下化と道路の拡幅について聞いた。
「計画はずっと昔からあって、最初は反対だったんですよ。でも、例えばこの目の前の通りはJR中野駅側に向かっての一方通行なんです。だからそちらにバスで行く場合は、JR中野駅界隈にすぐなんですけど、逆に向こうから帰ってくる場合はすごく遠回りのコースになる。
道路の拡幅工事で2車線になればそんな不便も解消されます。それやこれや、いろんなことを考えると、開発計画は街にとって悪いことじゃないと思うようになりました。うちも将来的な道路拡幅のために4年前に店舗そのものを、通りから数メートル分だけセットバック(後ろに下げて建て替え)しました」(伊藤さん)
再開発を起爆剤に街をもっとよくしていこう
鉄道の地下化や道路拡幅の計画が地元で噂されるようになったのは、今から20年ほど前のことだったという。当時はまだ商店街にも活気があり、街の変化を望まない人の割合も多かった。ところが時とともに状況は変わった。
「街そのものから、徐々に活気がなくなっていったというのは事実です。街の商店も代替わりして、新しい考え方を受け入れる人間も増えてきた。今は再開発を起爆剤に街をもっと良くしていこうという機運が高まっていますよ」(伊藤さん)
歩いていて感じたのだが、沼袋にはわかりやすい強みが少ない。急行は止まらないし、駅前の商業施設は豊富とは言えない。大型スーパーも減った。それでも、沼袋には、便利さだけでは測れない居心地がある。
犬を連れた人が川沿いを歩き、老舗の米屋で昔の同級生が再会し、焼肉屋には海外から客が訪ねてくる。地下化と道路拡幅で街の形は変わるだろう。だが、この“とかいなか”の匂いまで消えてしまうわけではない。変わりながらも、どこか懐かしい。その余白こそが、沼袋の住むとちょっといいところだ。

