真太郎さんにも言い分がある。名古屋出身の彼は専門学校を出てから仕事を転々としており、30歳のときには母親を亡くしている。休日の終わりには寂しさが募るようになり、やはりマッチングアプリで恋人候補を探した。年収で門前払いされることが多く、収入欄には記入しなくなった。
「付き合えたとしても半年から1年で振られることの繰り返しでした。理由はわかりません。『いい人なんだけど……』と言われることが多かったです」
そして真太郎さんは「背伸びしすぎていた」という結論に至る。追いかけるような恋愛をやめ、素の自分でいこうと決めたのだ。だからと言って初対面をラフにし過ぎることはないと思うが、幸運なことにそのときの麻衣さんの心境にはピッタリだった。
「あまりに普通な彼の様子を見て、『私もこの感じでいいんだ』と思って緊張せずに話せました」
誤解がないように書き添えるが、真太郎さんも麻衣さんも婚活市場的な視点で言えば「中の上」クラスの外見である。多少カジュアルにしていてもむさ苦しくはならない。そうではない人が「ありのままの自分」をデート中にさらけ出した場合は成婚確率を下げるだけになる。
次の段階は「ちゃんと好きと言ってくれたら」
初対面から1カ月後には真太郎さんが告白して交際が始まった。ちなみに「次の段階に進みたい」という事務的な表現をした真太郎さんに対して、「ちゃんと好きと言ってくれたら」という条件を麻衣さんは突き付けている。
さらに1年後に結婚。理想的なスピード感だが、慎重な2人の背中を押してくれたのは家族だったようだ。
「早い段階でお互いの親に会いましたが、私の両親は何も言いません。私は学生時代から一人でやっているので何とかやっていくだろうと思っているのかもしれませんし、後から母に聞いたら、『麻衣は結婚はできないだろう』とあきらめていたみたいです。でも、彼のお父さんが『2人はどうするの? もう若くないんだから、考えているだけじゃ何も進まないよ』と言ってくれました」
上司だったら完全にセクハラ発言だが親なら許される。真太郎さんはプロポーズのタイミングを計り始めたが、その姿は麻衣さんには「ゴニョゴニョ言っているだけでハッキリしない」と映った。

