あっという間の11曲30分、公演が終わった。岡本少年は真っ白になった。夜行列車で帰ったが、その道中のことは一切記憶にないという。
音楽で話しかけてくる
岡本さんが初めてビートルズと出会ったのはコンサートの約2年前の1964年10月、中学2年生の時。それ以前は、音楽についてはクラシック一辺倒で、「ビートルズ!?あんなの音楽じゃない」などとうそぶいていたという。
ある日、レコード店の店主から、クラシックの代わりにビートルズの『ア・ハード・デイズ・ナイト』を薦められた。しかし興味がわかない。1カ月後にようやくレコードに針を落としてみた。「ジャ〜ン!」。出だしのエレキギターの音に大きな衝撃を受けた。
「『これだ!』という言葉が、体中を駆け巡りました」
その響きは、自分でもよくわからない鬱屈しているなにかと、未来への不安やこわさを刺激してくるようだった。同時に不思議なほどに喜びがあふれてくる。岡本さんにとっては、新たな時代の幕開けを告げるファンファーレのように思えた。A面もB面も、寸暇を惜しんで聴き入った。
他のレコードも片っ端から買い集めた。岡本少年はさらにのめり込む。
「どの曲も今まで聴いたことがないオリジナルの世界観。一度聴いたら忘れられないメロディー、歌声、コーラス。美しい!キラキラ輝いている!さらにリズムがかっこいい! クラシックになかった躍動感が、当時はたまらなかったんですよ」
岡本少年が心動かされたのは音楽的要素だけではない。後に岡本さんはこう分析している。
「彼らはね、音楽で話しかけてくるんですよ」
当時のロックンロールは勢いやノリが中心だったが、ビートルズはそこにシンプルな言葉を持ち込む。

