6月30日朝5時。ひとり新幹線で、7〜8時間かけて東京に向かった。当時15歳の一人旅は正直怖かったそうだが「ビートルズが日々挑戦する姿を見せてくれた」からできた。
胸を高鳴らせて着いた日本武道館。現地は警察の機動隊の車がずらりと並び、ものものしい雰囲気に包まれていた。外も中も警察官で埋め尽くされていたのだ。
「こわい、こわい、こわい。中は、通路からなにからみんな警察が埋めてるんだもんね。ステージの下も、軍靴履いて、ゲートル巻いて、制服着た人たちがわんさかいましたよ」
歓声をあげながら手を振る観客、「うるさい」と軽蔑の視線を向ける文化人
客席には高校生や大学生の姿が目立っていた。メンバーのイニシャルをつけたセーターを着た4人の女性ファンや、「ビートルズ大好き」と書いた横長の布を持つ女性ファンの姿が特に記憶に残っているそうだ。
岡本さんの席は、ステージのほぼ正面、2階席の10列目。スピーカーからの音も拾いやすく「いい席」だった。当時の武道館はまだ音楽コンサート向けの音響環境が十分に整っていなかったので、まったく音が聴こえない席もあったという。
本公演の前に1時間超の、前座と休憩で「さんざん待たされた」後、いよいよ待望の4人の登場だ。
「THE BEATLES」のランプがきらびやかに点灯する。ステージの後ろから階段を上がってくる4人が見えてくる。
「目の前にビートルズがいる……!」。岡本さんはあまりの衝撃に、かたまってしまった。
呆然としたなか「男が赤を着ていいんだ!かっこいい!」とハッとした。あとは見るもの聴くもの感じるすべてを記憶したいとさえ思った。
当時の音楽演奏会は、静かに座って聴くのが正しい“お作法”とされていた。
しかし、大半の観客は「キャー!」と歓声をあげながら手を振っていた。一方で招待された文化人はみな「うるさい」と軽蔑の視線を4人と会場に向けていた。
この、スタンディングして声をあげながら観客が音楽を楽しむスタイルは、ビートルズが原点なのだ。
また、残りの観客は、本物のビートルズを目前に、目が点になって呆気にとられていたそうだ。

