ビートルズは、伝統的な価値観を根底から覆す“危険”な存在としてみなされていたのだ。
若者の熱と大人の拒絶。その溝が埋まらないまま、1966年、ついに来日公演が決定する。会場は日本武道館。日本の伝統ある神聖な武道の聖地で外国人のロックバンドが演奏会を行うことは初めて、かつ異例中の異例だった。「けしからん!」と、政治家や保守派から激しい反対運動も起きたという。
ものものしい空気感のなか4人が来日。期間中、のべ3万5000人もの警察官が動員され、国賓レベルの警戒態勢が敷かれた。
あれから60年。兵庫県赤穂市にある「ビートルズ文化博物館」の館長・岡本備(そなう)さん(75)は、当時、日本武道館の客席でその歴史的な瞬間を体感した一人だ。
あの日、日本武道館ではいったい何が起きていたのか。当時の空気感はどうだったのか。そして、なぜ若者はそこまでビートルズに魅了されたのか。岡本さんの視点から当時を振り返ろう。
超厳戒警備の日本武道館公演
当時高校1年生だった岡本さんは、大の“ビートルマニア”。来日公演に行かない理由はなかった。
公演スポンサーはライオン(当時ライオン歯磨とライオン油脂の2社)。東京に住むおじが送ってくれた新聞広告に、「商品を買ってビートルズに会いに行こう」という旨の全面広告を見て「これだ!」と奮起した。
動員数約5万人のうちの、この特別招待枠5000人に照準を絞った。母の理解もあり歯磨き粉を「何百個も」買って応募、奇跡が起き、6月30日と7月2日の2日分が当たった。
「歴史の1ページをこの目で見られるなんて――夢やと思いました」

