尾瀬国立公園の山深くに眠る、“幻の鉱山街”根羽沢鉱山。その記憶を追い続けてきた人物がいる。県内の自治体職員として勤務する傍ら、ライフワークとしてこの鉱山の調査を続けてきた朝倉早也輝(あさくら はやて)さんだ。
「誰も知らない街に、どうしようもなくロマンを感じるんです」。朝倉さんは、そう言い切る。
根羽沢鉱山は、地元の人間が作った鉱山ではなかった。外から来た人々が山中に街を築き、閉山とともに散っていった。語り継ぐべき「地元の人」が最初からほとんどいなかったのだ。本記事は、その鉱山街の歴史をたどった前編に続き、記憶を掘り起こし続ける人々の物語を描く。
人生を変えた、ホストファミリーの何気ない一言
朝倉さんが根羽沢と出会ったのは、群馬県立尾瀬高校に通っていた高校時代のことだった。
太田市出身の朝倉さんが尾瀬高校に進学したのは、特別な目的があったわけではない。仲の良い友人が行くと聞いたから、ただそれだけだった。
尾瀬高校には県内外から自然環境を学ぶ生徒が集まり、遠方からの生徒は地元のホストファミリー宅に滞在する「ホームステイ制度」がある。朝倉さんもその制度を利用し、片品村の家庭に下宿していた。
ある日、ホームステイ先のおばさんが何気なくこう言った。「昔、あの山に鉱山があってね。街もあったらしいよ」。
特に目的もなく流れ着いた山奥の村で、朝倉さんはその言葉を聞いた瞬間、何かが心に引っかかった。それが、人生を大きく変える場所との最初の出会いだった。
