地方の飲食店が話題作りのために個性的なメニューを打ち出すケースは少なくないが、ミートソースそばは、そばの本場である長野の老舗が大まじめに作っている点で”異端“と言える。
アブラヤの創業は1833年。油売りとして始まり、行灯用の菜種油や油かす肥料を扱っていた。戦後は食堂をはじめとする飲食業へ転換。1997年に、長野オリンピック前の再開発で誕生したウェストプラザ長野へ移転し、食堂で人気だったそばをメインとした「そば亭 油や」として生まれ変わった。
現在は手打ち主体の自家製麺を提供している。そばは七三(そば粉とつなぎの割合が7:3)で打ち、長野県産や北海道産のそば粉を中心に、時季ごとに品質を優先して厳選。
細打ちで喉越しや口当たりを重視しているそうだが、店の名物である「戸隠おろしそば」を試食させてもらったところ、そばの味と香りもしっかりと感じた。カツオ荒節やサバ節、ムロ節、昆布、干し椎茸を合わせただしがそばそのもののおいしさを引き立てているのだろう。
王道を歩んできた「そば亭 油や」にとって、ミートソースそばは挑戦だった。「チャレンジメニュー」という位置づけだったが、チャレンジするのは客ではなく、店そのものだった。
「外国人はあまりそばを食べない」から始まった
店を訪れるのは観光客と地元客がおおむね半々だという。その中で、ミートソースそばの開発では明確に外国人観光客を意識した。
「外国人って、うどんは食べても、そばはなかなか選ばないんですよね。ヨーロッパで麺料理といえば、パスタのイメージが強い。それならパスタ寄りの入り口を作れば、そばにも興味を持ってもらえるんじゃないかと思ったんです。パスタといえばミートソースという、今思えば単純な発想でした」(北村さん)
