JR長野駅前にある老舗そば店「そば亭 油や」で今、不思議なメニューが静かな人気を集めている。その名も「ミートソースそば」。
2023年5月に登場したこのメニューは、冷たいそばの上に温かいミートソースをかけ、揚げ玉やネギ、のりをトッピングしたひと皿だ。見た目はパスタのようだが、口に運ぶと、トマトの酸味と甘み、和風だしのコクが広がる。それでいて、そば本来の風味もしっかりと感じられた。価格は税込み1200円。
今年4月、地元紙「信濃毎日新聞」が小さなコラム記事でミートソースそばを紹介したのを契機に、その翌日から、新聞を見たという客が数多く来店。それまで月45食前後だった販売数が4月以降は90食に倍増した。
インバウンド狙いだったが、日本人客に好評
長野駅周辺でも外国人観光客が増えるなか、インバウンド需要を取り込もうと考案されたメニューだが、意外にも興味を持ったのは日本人客のほうだった。「意外とおいしい」と、反応も上々だ。
「グループで来られて、その中のお1人に『これ、食べてよ』みたいな感じで(笑)。外国人向けに考えたんですが、実際にはチャレンジャーな日本人が食べている印象が強いですね。外国人客の注文比率は、現在でも1割以下です」
こう話すのは、ミートソースそばを考案した、店を運営するアブラヤの代表取締役専務、北村泰邦さんだ。
名前と見た目こそ、いわゆる変わり種メニューの類に見えるが、実際に食べてみると、みそやそばつゆのコクによって、きちんとそばとして成立しており、単なる“ネタ”や“色モノ”で終わっていないことがわかる。
ミートソースには、ニンニクとショウガ、玉ネギ、豚ひき肉に加え、オリーブオイルも使用。最初のひと口目はパスタを思わせる洋風の味わいを感じるが、食べ進むうちに、そばへ引き戻される。そのバランスが実に秀逸なのである。
この「麺類と洋風ソースの組み合わせ」は、焼きそばにトマトソースをかける新潟の「イタリアン」や、極太のスパゲッティにピリ辛の特製ソースを合わせる名古屋の「あんかけスパゲッティ」といった、すでに定着している郷土グルメと構造的に近い。そのため、単なる変わり種にとどまらないポテンシャルを感じさせる。

