もう一つ見逃せないのが、物語コーポレーションのブランド群に通底する「肉を主役に据える設計」だ。丸源ラーメンは「熟成醤油ラーメン 肉そば」を名物商品として展開し、熟成醤油ラーメンきゃべとんにも「熟成醤油 豚そば」がある。焼肉業態の肉源も含め、業態が変わっても「肉」を商品価値の中心に置く開発が繰り返されている。つまり物語コーポレーションは、うどん業態を開発したというより、「肉をどう食べさせるか」という自社の文脈を、うどん市場へ移植したとも読める。
「セルフ」が取りこぼしていた滞在需要
2026年6月2日、平日昼のオープン前。「肉讃岐 もっちりうどん源次郎」の入口には約20人が並んでいた。オープン後20分ほどでウェイティングが発生した。
店内に入ると、右側にボックス席、左奥にお座敷、中央にテーブル席、厨房を囲むようにゆとりあるカウンター。1人でも入りやすく、3世代利用まで想像できる設計だ。
平日昼の客層は単身客と2人組が中心だった。高齢夫婦、40代以上の女性単身客、仕事中の早昼利用も目立つ。一方で、子連れの姿はほとんど見当たらなかった。だが、この客層こそが重要な手がかりになる。
席に着くと、スタッフが目線を合わせてメニューを丁寧に説明する。効率だけを考えれば省けるはずの説明が、ここでは食事体験の一部になっている。
入店時には鰹節へのこだわりも伝えられた。ボタン呼び出しなので大声を出す必要がなく、配膳を待てばいい。セルフ式のようにトレーを持って移動する必要もなければ、こぼす心配もない。「回転を急かされる空気」はほとんどない。
丸亀製麺なら15分以内に帰るところを、源次郎では40分は滞在してしまう。そんな感覚が生まれる店だ。
公式のプレスリリースが「お一人さまからファミリーまで老若男女問わず幅広い客層に安心して利用できる設計」と説明する意味は、現場に来るとよくわかる。源次郎が受け止めようとしているように見えるのは「ファミリー」だけではない。セルフ式のうどん店では落ち着いて食事しづらかった人たち全体だ。
高齢者、女性単身客、ゆっくり食事をしたい人。その全員が、フルサービスのうどん店に居場所を見つけているように見えた。
「いらっしゃいませ」の段階から、“外食ってこうだよな”と思った。そんな感覚が生まれる店は、セルフ式チェーンが存在感を高めた時代にむしろ珍しい。
