もしも「空気の値段」が決まったら
そう遠くない未来のある時点で、政府がこんな発表を行ったと想像してみてほしい。
「皆さんの呼吸する空気が民営化されます」。
空気の品質が低下すれば、空気の販売権を地域ごとに認可する政府との契約を失うことになるからだ、と。
成長重視のマニフェストを掲げて選出された首相は、国の空気政策の転換を、新たな夜明けの始まりと喧伝する。しかし空気の清浄化は一向に実現しないように見える。
政府は代わりに「微粒子クレジット」の制度を導入し、汚染物質の排出量を規定の基準内に抑えた企業は、その超過分を、基準をオーバーした企業に売却できる仕組みにする。
風邪は長引くようになり、タバコも電子タバコも吸っていないというのに、普通なら全快している時期を過ぎても、不快な咳が何週間も続く。富裕層のマンションや家屋には、家庭用の空気清浄システムが据え付けられている(もちろん、その分だけ貧困層の住む地域の大気汚染度は増す)。しかし運悪く貧しい暮らしを送っている人々は? 空気会社から提供されるものを、何であれ我慢して呼吸し、その料金を支払い続けるしかない。


