その理由は、端的に言えば、「中国国内観光のほうがもっと楽しいから」である。というのも、中国国内の観光、特に「文旅(ウェンリユ)」と呼ばれる旅行の質が圧倒的に上がった影響が大きい。
「文旅」とは、「文化旅行」の略語で、従来の「観光地を見て写真を撮って終わり」ではなく、地域文化・歴史・芸術・コンサート・IPなど、物語性や没入型体験などを組み合わせ、体験価値と精神的な豊かさを重視する新しい観光・消費形態を指す概念と言われる。
特に若者にとって、ただどこかに行くのではなく、例えば「癒やし」「物語性」「(SNSでの)映え」「推し活」「自己成長」などにつながる観光消費となっている。この文旅、実はその成長が日本旅行にも関わっている観光文化だ。
日本のような“上質な旅行”を国内でもできるように
コロナ時期、海外には行けなかったが国内の移動や出勤は可能だった。それまで日本で満喫してきた上質な旅行ニーズを、なんとかして中国国内で満たそう……その結果、日本のわび・さびや自然親和性を取り入れたり、ものが少ないスタイルを取り入れたりしたホテル、リゾートホテルが中国国内のあちこちに出現するようになった。
そして、各地方政府もこの空前の機会を逃さぬよう、自分の地域の歴史・文化資産を掘り出し、物語化と差別化したコンテンツを続々と作り出した。
例えば、雲南省の小さな村でゆっくり過ごしながら地産地消のコーヒー豆を摘み、子供のコーヒー煎り体験や、春節の時に汕頭まで行き、そこでしか見られないお祭りを見学する旅行や、推しのコンサートツアーに沿って小さな町を周遊する。
今までは大都市や、著名な観光地だけが観光経済に恵まれてきたが、地方都市でも観光経済を享受できるようになった。
その結果、中国文化旅行の市場規模は、20年の約1兆元から、25年の約3兆397億元(見込み、1元=約21円)まで成長した*。短期間でコロナ前の市場規模を上回り、内容も品質も大幅に向上したのだ。今まで日本でしかできなかった体験、あるいはそれ以上の体験が中国国内でできるようになり、わざわざ日本に来なくてよい状況になってきたともいえる。
*Zhiyan Consulting - 業界情報ポータル
