警視庁捜査一課の刑事・涼宮亜希を演じる杏が、ブルーのロングコートを羽織ってタンペレの街を歩く姿は様になり、長い手足の彼女だからこそフィンランド俳優たちの中にも違和感なく溶け込んでいます。そんな現場の手触りを、3月31日に都内で開催された完成報告会で杏自身も言葉にしています。
本作のために約3ヶ月、家族とともにタンペレに滞在し、英語のセリフとアクションに本格挑戦した杏は、「フィンランドのチームは、私に直接関係のない雑談までも英語で会話してくれました。私が聞いて不安に思わないように」と語っていました。言葉も制作文化も違う現場で、相手に合わせて動く気遣いが、作品の空気感を作っていたのかもしれません。
フィンランド国家捜査局・FNBIの刑事・ヨン・ライネを演じる相棒役のヤスペル・ペーコネンは、20年以上のキャリアを持ちハリウッド作品にも出演してきた実力派です。
来日時に彼に話を聞くと、撮影が始まる前、フィンランドの森を歩いていたとき、非常に珍しい白い鹿に出会い、動画を撮ってスタッフに送ったといいます。「運命的な偶然だと感じました」と振り返っていたその出来事が、作品の中心に据えられたモチーフとも静かに響き合っています。
では、肝心の中身はどうだったのか。この先、ネタバレが含まれますので、ご注意ください。
考察しがいのないミステリー作品か
確かに、北欧ノワールの空気感は本物でした。白鹿をモチーフにしたカルト的な世界観には、フィンランドの民話や自然崇拝と結びついた神聖さと残酷さの両面が宿っています。血を抜く儀式や第二次世界大戦にまで遡る因縁の描き方も、北欧ノワール特有です。過去の傷が現代に影を落とすという構造を体現していました。
キャストも納得感があります。なかでも、高木刑事役の濱田岳の演技は、破天荒な主人公を支えるバランス感覚が抜群です。「高木刑事の存在が安心感を与える」という視聴者の声が象徴的で、愛すべきキャラクターと言わずにはいられません。
