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米ドルも日本円も中国語では「元」と呼ぶ理由 16世紀のドル銀貨からひもとく漢字と日本語の知られざる歴史

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各国の紙幣
なぜ中国語では米ドルや日本円をすべて「元」と表記するのか(写真:freeangle/PIXT)
  • 岡本 隆司 早稲田大学教育・総合科学学術院教授
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日本語は古来、文字をもたなかった。日本語の表記は、中国から漢字・漢語をもちこむことで、ようやく可能になる。日本に限らない。東アジアの周辺諸国は、おおむね日本と同じ運命をたどらねばならなかった。逆にいえば、中国発祥の漢字・漢文が多様な在地社会に覆いかぶさって、文字による開明、すなわち文明をもたらしたというわけである。日本も文字・漢字を会得したことで、ようやく国際社会へのデビューを果たすことができた。

文明開化はよいことばかりではない。従前になかった事態に適応しなくてはならず、それは往々にして、苦痛をともなう。しかも習俗・国情に合わないことも少なくない。圧倒的に先進的だった中国文化の影響を被って、日本語は漢字・漢語抜きには表記できなくなってしまった。

グローバルに広がる漢字文化と日本語

それでも日本は、マシなほうだといえる。波高きシナ海・日本海を隔てた島国だったから、大陸とは一貫して疎遠で、陸続きの国々とは比較にならないくらい、その影響は軽微だった。やがて独自の制度・宗教のみならず、仮名文字による新たな表記法まで作り出す。

もちろん漢字・漢語は、そうした東アジア周辺国の言語のみならず、古くはいっそう遠隔のインドの仏教経典の翻訳で、新たな漢語の世界を築くとともに、近くは欧米との関係が深まるにつれ、東アジアにとどまらない華人の空間を拡げた。

漢字・漢語・漢文はこのように、日本・国語の成り立ちにとどまらない。東アジア・グローバルなスケールに拡がりつつ、さまざまな文化を形づくった。あたかもプリズムのように、広狭深浅さまざまな乱反射をともなった影像は、各地になおその刻印を残している。

最新の『アステイオン』104号は、古今の文明という見地から、そんな漢字・漢語・漢文の様相を考える論考を集めている。ひるがえって現代の日本人・日本語をみつめなおす足がかりをさぐる。

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【言語を超えて世界に通じる漢字】

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