「ウラジーミル・プーチン大統領がウクライナに対する『特別軍事作戦』を開始していなければ、人類の文明はおしまいだったかもしれない」
(注:本記事ではこのように教科書の翻訳を掲載していますが、いずれも原語からの翻訳を経たものです。翻訳の都合上、語感や細かなニュアンスについては原文と完全に一致しない箇所がある可能性がありますが、各記述の大意や論旨に違いはないものとお読みください)
つまり、主権国家への侵略戦争が、「人類の文明を救う行為」として描かれているのです。
教科書はさらに踏み込み、もしウクライナがNATOに加盟したのちに「クリミアかドンバスで挑発行動を起こし紛争を仕掛けていたら」、ロシアはNATO全加盟国と戦争になり、「そのようなことになれば、文明の終わりだったかもしれない」と主張しています。先制攻撃こそが世界を救った、という論理です。
西側諸国の描かれ方も鮮烈です。
「西側諸国は、ロシアの国内情勢をなんとしても不安定化させようとしている。この目的実現のため西側は『あからさまなロシア嫌悪』を広めている」
ウクライナは「西側の操り人形」、戦争の責任はすべて外部にある、というストーリーが一貫しています。さらに教科書は、14年までウクライナ人口の80%がロシア語を母語としていた、と記述しています。実態は約30%とされており、研究者からは事実関係そのものへの疑義も指摘されています。
ここで重要なのは、これが単なる「政府広報」ではなく、学校で使われる正式な教科書であるという点です。10代の子どもたちは、国家が編集した“歴史”を、史実として浴び続けることになります。
対極にあるイギリスの「率直さ」、その限界
次に、イギリスの中学生向け教科書を見てみましょう。
19世紀の大英帝国によるインド統治について、教科書は東インド会社が課した「塩税」を取り上げます。生活必需品である塩に、かつてのインド王国がかけたよりもはるかに高い税を課し、人々の暮らしを締め上げた事実が記されています。
そして1857~58年のインド大反乱(セポイの反乱)への報復について、教科書は次のように書いています。
