実際に講師が来日したのは10月だったが、マリアのこんな考え方のもと、学生たちは、自分たちの力で予習をすることになったのである。
授業をフォローした大関和と鈴木雅
抜群の英語力を持つ峯尾は入学式までに『Notes on Nursing』の翻訳を終えて、大関和や鈴木雅ら8人の生徒にそれを説明した。マリアから見込まれるだけあって、責任感の強さが感じられるが、峯尾もまたほかの生徒と同様に、看護については素人である。
学生たちは臨時講師となった峯尾に対して、欧米の医療器具の説明までつい求めてしまうが、峯尾だってわかるはずがない。のちに「峯尾さんの説明は何をいっているのかわからない、などと文句をいわれました」と、本人が振り返っている。
何とも気の毒だが、峯尾がこう続けていることに着目したい。
「そのたびに大関さんが大きな声で一生懸命弁解してくれたことを覚えています」
ドラマでは、大関和のモデルとなる一ノ瀬りんを、見上愛が困っている人を見捨てておけない女性として演じているが、実際にもそんな人物だった。その優しさは患者のみならず、同級生にも向けられていたことがわかる。
11月になりやっと講師のアグネス・ヴェッチが着任すると、峯尾と同じく英語が堪能な鈴木雅が通訳となり、看護学生たちに授業の内容を解説。アグネスの早口にきちんと対応できるように、授業前日には専門書での予習を欠かさなかったという。
看護学や衛生学、そして医学の講義を日々受けながら、大関和と鈴木雅はタイプは違えど、トレインドナース(Trained Nurse)として成長していくことになる。
【参考文献】
青山誠著『大関和 看護に人生を捧げた日本のナイチンゲール』(角川文庫)
田中ひかる著『明治のナイチンゲール 大関和物語』(中公文庫)
田中ひかる監修『大関和 明治のナイチンゲールたち』(平凡社)
櫻庭由紀子著『戦う白衣の天使 大関和・鈴木雅ものがたり』(内外出版社)
