堀氏によれば、当時その高校は、卒業率が6割を切る状況だった。しかし、演劇ワークショップ導入後は、辞めていく生徒は確実に減少したという。
「継続していくうちに、生徒たちは、今まで見せなかった自身の弱さのようなものを自然に見せるようになっていきました。また、間違ってもいいから自分の意見を言ってみようとする意識が芽生えたり、注意された時に素直に聞くようになったりなど、自己肯定感、自己受容感の向上につながっているようにも感じました。
変化したのは生徒だけではありません。講師と生徒たちの関わり方を見ることで、現場の先生たちの生徒への接し方も変わっていく。結果として、学校全体の雰囲気も変わっていきました」
堀氏は、「これだけが要因ではない」としつつも、「学校が良く変わる1つの大きなきっかけになりました」と振り返る。
学校経営にも広がる演劇ワークショップの視点
演劇ワークショップは徐々に成果への評価を高め、文化庁の「文化芸術創造拠点形成事業」にも採択された。18年には、岐阜県教育委員会と文学座が正式に連携協定を締結し、「高等学校における演劇ワークショップ事業」として県全体の教育施策に位置付けられた。
24年度からは他劇団の講師も加わり、現在では県立高校63校中21校で実施されている。全日制・定時制を問わず、県内各地へ広がっており、「安心して他者と関われる経験」を支える取り組みとなっている。
特徴的なのは、この実践が一過性の事業にとどまらず、長年の継続を通じて学校経営にも影響を与え始めている点だ。堀氏によれば、現在では県内の公立高校66校の校長のうち、「半分以上が校長、あるいは教員として演劇ワークショップを経験しています」という。
