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高校無償化で問われる「公立高校の価値」、学力だけでは足りない…岐阜県「高校改革×演劇教育」で起きた意外な効果

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演劇ワークショップの様子
岐阜県では県立高校63校中21校で演劇教育を実施している(写真:岐阜県教育委員会提供)
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きっかけとなったのは、11年度に堀氏が教育委員会事務局に在籍していた頃、県立高校で直面した課題だった。県内のある高校で生徒数減少が進み、欠席や遅刻も少なくなかった。教室には、どこか他者と距離を取るような空気が漂っていたという。

「学びにくさや生きにくさを感じている生徒が少なからず存在し、学校全体として人間関係やコミュニケーションに課題がありました。そんな中、当時の教育長と一緒に学校視察に行った際、可児市文化創造センター ala の演劇関係の方が授業を見られたのです。

すると、『生徒同士のコミュニケーションが取れていないし、先生と生徒との距離感もどこか不自然だ』と。そこで、『この学校には演劇的な手法を用いた教育が必要なのではないか』という提案をいただいたのです」

これを受け、翌12年度から文学座と連携した演劇ワークショップが始まった。演出家の西川信廣氏や俳優の富沢亜古氏、瀬戸口郁氏らが講師として学校に入り、生徒たちと対話や表現活動を行う取り組みがスタートした。

実は堀氏自身も、12年度にその高校の教頭として赴任している。堀氏は、「この取り組みを始めるというミッションをいただきながら赴任しました」と語る。単なる情操教育としてではなく、「人と関われない」「自分を表現できない」といった課題に対し、表現活動を通じて学校そのものの空気を変えていこうとする試みだった。

演劇ワークショップといっても、目指すのは「舞台づくり」ではない。堀氏は、その本質はコミュニケーションにあると語る。「演劇は、役者同士が相手を見ながら息を合わせて作っていくもの。つまり、人との関わりそのものなんですね」。

ワークショップでは、「シアターゲーム」と呼ばれるコミュニケーションゲームを実施する。対象は希望者ではなく1年生全員。20〜30人程度のグループにわかれ、年間3回行われる。堀氏によれば、重要なのはゲームそのものより、その後の「語り」だという。

最初は視線を合わせようとしなかった生徒たちが、ゲームを通じて少しずつ笑い始める。演劇人の講師は、その小さな変化を見逃さない。「今、ちょっと相手を見られたね」と自然に声をかける。そうした積み重ねが、生徒同士の空気を変えていった。

演劇ワークショップの様子。その本質はコミュニケーションにあるという(写真:岐阜県教育委員会提供)

辞めていく生徒が確実に減少した…

「シアターゲームを体験して終わりではありません。『今、どう感じた?』『なぜうまくいった?』『人と関わるってどういうことだろう?』という話を、演劇人の方々が共感的に語っていく。その時の子どもたちの引き込まれ方が、やはり教員とは違うんです」

堀氏は、「演劇人は、観察力がとてつもない」と強調する。

「誰が孤立しているか、誰が無理して笑っているか、誰が今、少し聞こうとしていたか。そういう小さな変化を、本当によく見ています。そこで適切な声掛けをすると、生徒たちが少しずつ心を開いていくんです」

教科指導や生活指導とは異なり、「生徒同士がどう関わっているか」を観察する視点。それが、演劇人が学校に入る大きな意味の1つと言えそうだ。

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