しかし、実際にドイツに行ってみると、「環境対策疲れ」もあってか、気候変動問題への関心はかつての勢いを失っていました。環境政党「緑の党」は支持率を低下させており、すでに議席を失った州もあります。気候変動対策を求める若者たちの運動である「未来のための金曜日」も、一時期ほどの盛り上がりはありませんでした。
以前はしばしばメディアで気候変動対策の必要性を訴えていた、グレタ・トゥーンベリさんをニュースで見かけることも、非常に減りました。おそらく、彼女がガザで起こっているイスラエルによる虐殺に対して、厳しく批判し続けてきたからだと思います。ホロコーストの歴史を持つドイツでは、イスラエルを批判することはタブーなのです。知識人たちも多くが親イスラエル的な発言を続けており、そこにはアラブ人に対する差別的な視線が見て取れました。
そうした光景に、正直なところ幻滅に近い気持ちも味わいました。
ガザとの連帯を掲げる市民運動は「反ユダヤ主義だ」として取り締まられ、にもかかわらずネオナチ的な極右政党が支持率を急速に伸ばしている。そして、ウクライナ戦争ではロシアを激しく批判しながら、ガザの虐殺には口をつぐむ。ドイツが、そしてヨーロッパが掲げる人権や民主主義のダブルスタンダードぶりが、そこには露骨に現れていました。
戦前とさまざまな共通点がある現代
ただ、社会の空気は揺れ動くものです。ここ10年ほど、気候変動に関する運動だけでなく、ウォール街占拠運動やサンダース旋風、LGBTQの権利拡大などポジティブな動きが世界中で広がっていたことに対する揺り戻しが起こっている面もあるでしょう。
「現代は戦前に似ている」といわれます。時代がファシズムへ向かっていた100年ほど前と現代とは、戦争、インフレや経済格差の拡大、閉塞感の蔓延、急速なグローバル化に対する揺り戻しなどさまざまな共通点があると感じます。
転換期とは、冒頭にも書いたように、マニュアルでは対応できないものです。似たような状況――おそらく100年ほど前の――を生き延びてきた人類の知恵や経験から学ぶのが非常に大事なのではないでしょうか。
