この企画の巧みさは、プレスリリースを読むとさらによくわかる。
まず数字の翻訳だ。累計2000万本という数字を、そのまま出していない。本文には日本人の約6人に1人が体験した計算となる、と書いてある。2000万という数字を人口比に変換することで、読者が自分ごととして受け取れる体感値に落とし込んでいる。プレスリリースとしての要件である事実の伝達を守りながら、メディアが見出しに使いたくなる言葉を同時に用意している。
さらに際立つのが、無限ミッションの設計だ。「月間5万杯達成で来月も継続、達成できなければ終了」という数値目標と条件をプレスリリースで公開することで、達成の告知そのものが次のニュースになる。単なる企画のお知らせではなく、続報が生まれる構造をプレスリリースの中に仕込んでいる。4月の達成を告知したプレスリリースは、その設計が機能した証拠だ。
「ツンデレ」「寄り添い」というネーミングも同様だ。味の説明ではなく人間関係のような言葉を使うことで、SNSで語りたくなる言葉になっている。プレスリリースに求められる要件を満たしながら、キャッチーさを手放さない。この徹底ぶりが、企画全体のトーンと一致している。
そもそもプレスリリースとは、報道機関に向けて発信する会社の公式文書である。直接の読み手は記者や編集者であり、そこで取り上げられて初めて、一般消費者や投資家、株主といった最終的な読み手に届く。記者が記事にするかどうかは、送り手ではなく受け手が決める。毎日届く無数のプレスリリースの中で、手が止まるものはごくわずかだ。
事実を正確に伝えることが絶対条件である一方、メディアが思わず取り上げたくなる切り口と数字を用意できるかどうかが、腕の見せどころになる。そして、これを継続するのは意外と難しい。自らニュースバリューを生み出し続けられる企業は、そう多くない。
「流行っている気がする」を数字が証明する
2名で5725円。55円の串が起点になり、ドリンクと一品料理が積み上がる。この構造は、決算資料の数字として記録されている。
2025年11月期の串カツ田中セグメント売上高は175億22百万円(前期比+24億52百万円)、営業利益は14億14百万円(同+4億18百万円)。会社側はこの増収要因を「新たな看板メニュー『無限ニンニクホルモン串』の導入による来客数の伸長」と説明している。
2026年11月期第1四半期(3カ月)では串カツ田中事業の売上高が49億20百万円(前年同期比+21.4%)、営業利益は6億53百万円(同+1億31百万円)。決算資料には「『無限串』による集客効果が続き売上・営業利益共に増加」と記されている。
営業利益率も2024年11月期の5.0%から2025年11月期は5.6%へ改善した。55円の串は「赤字覚悟の集客商品」ではなく、収益構造ごと底上げしている。
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【無限串は成長の起点】
