今回、ネバダ大学の教授が、「不快さ」や「不便さ」が私たちの健康を向上させ、人生を豊かなものにすると説く『快適さの罠:私たちの祖先が経験した「不快さ」が人生を充実させる』より、一部抜粋・編集のうえ、お届けする。
よく聞く言い回しは本当なのか
マーク・シーリー博士は、人間のコンフォートゾーンの限界を長年研究してきた心理学者だ。
ニューヨーク州立大学バッファロー校に所属する彼は、昔から「私たちは、つまずきや痛みを乗り越えるたびに強くなる」という、世間でよく口にされる決まり文句に強い関心を抱いていた。たしかに、こうした言い回しにはどこか真実味があるように思える。しかし、実際にそのとおりであることを裏付けるデータは存在しなかった。
「従来の研究では、つらい出来事や強いストレスにさらされると、それは例外なく悪い影響をもたらし、逆境や否定的な結果につながる、という単純な関係が示されていました。そうした出来事は後々まで影響を引きずり、そのために将来的な心理面や、場合によっては身体面の健康リスクまで高めてしまう――そんな暗い見通しだったのです」とシーリーは語る。
ところがある日、シーリーは「タフニング(toughening)」と呼ばれる概念を扱った研究に出会った。それは悲観的な見方に異を唱える理論だった。彼はこう説明する。



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