「強いストレスを伴う悲観的な出来事によって押しつぶされるのは良くない。でも同時に、まったくストレスを受けずに守られている状態も、決して理想的ではない。むしろ、ある程度のストレスを受けることが、心理的にも、身体的にも、最も健やかな状態をもたらすはずだ――そう考える理論なのです」
シーリーは、「タフニング理論」が動物の世界において実際に成り立つことを確認した。
たとえばスタンフォード大学の研究では、若いリスザルを対象に、こんな実験が行われた。
研究者たちは、リスザルたちを10週間にわたり、週に1度、家族から引き離した。すると成長したリスザルは、ずっと守られて育った兄弟たちと比べると、実際の生活において適応力が格段に高かった。彼らは困難に直面しても動じず、リーダーシップを発揮し、主体的に行動するタイプに成長していたのだ。
シーリーは考えた。タフニングという現象は人間にも当てはまるのだろうか?
2500人を対象とした調査
彼は研究チームを率い、調査を始めた。人びとがそれまでの人生で直面した大きなストレスについて探る調査だ。
対象となったのは、さまざまな属性から成る2500人のアメリカ人で、年齢は18歳から101歳まで。男女の割合はほぼ半々とした。人種構成はアメリカ全体の比率に合わせ、経済的状況が偏らないようにした。まさにアメリカの縮図といえる集団だ。
参加者は、インターネットを無料で使える謝礼を受け取り、定期的にオンラインで質問に答えた。
まず、これまでにストレスを経験した回数が聞かれた。具体的には、重い病気や経済的困窮、家族や親しい人の死、暴力、洪水、地震といった強いストレスについてだ。さらに心身の健康について聞かれた。
気持ちの落ち込みや不安はあるか? 病気や痛みはあるか? どのくらいの頻度で病院に行き、処方薬をどれだけ服用しているか? そして何より、あなたは幸せと感じるか?
シーリーが手にした結果は、それまでの通説を完全に覆すものだった。そして彼自身の仮説を裏付けるものだった。


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