――実際にロヒンギャ難民の方々を起用していますね。
藤元:ドキュメンタリーに近い身体の振る舞いをフィクションという大きな構造の物語の中に導入するという手法を取っています。遠いキャラクターを演じるのではなく、本人が持っている社会的役割を物語に持ち込んでもらうのです。ロヒンギャ難民と顔が似ているバングラデシュ人俳優では意味がありません。実在するロヒンギャの方々を起用することが大前提でした。
――17年8月大虐殺事件後も50万人から60万人のロヒンギャが留まるラカイン州の大部分は国軍と抵抗勢力の少数民族武装勢力が衝突する戦闘地帯になっており、ロヒンギャの若者たちが強制的に徴兵・拉致され、衝突の最前線に「人間の盾」として送り込まれるという残虐な事態も発生していると言われています。
藤元:バングラデシュのコックスバザール周辺のキャンプには115万人以上のロヒンギャ難民が密集して暮らしていますが、バングラデシュ政府は彼らを難民として正式に認めておらず、キャンプ外への移動、就労、そして公的な教育を受ける権利を厳しく制限しています。
こうした絶望的な状況の中、映画で描かれるロヒンギャたちのように密航船でマレーシアやインドネシアを目指すロヒンギャもいます。しかし、木材でできた粗末な船での航海は危険極まりなく、多くの人々が事故で命を落としています。
ベネチア国際映画祭で送られた拍手
――ベネチア国際映画祭での反応をお聞かせください。
藤元:当日は1500人と一緒に映画を見たのですが、エンドロールが流れたとき、嘘のない熱気が伝わってきました。
無国籍でパスポートがないので、主演のソミーラとシャフィは来ることができませんでした。でも、席は取ってもらっていました。その空席に向けて会場の方々が拍手をしてくれたことがとても嬉しかったです。
――ベネチア国際映画祭と日本で反応の違いはあったのでしょうか? やはり、日常的に難民が流入するヨーロッパの国での上映は日本とは違うのでしょうか?

