MIRの来長勝氏は言う。
「ファナックや安川電機は中国メーカーに顧客を奪われたわけではない。自動車業界をはじめとするハイエンド市場、高品質市場では依然として信頼度が高い。エストンやイノバンスが販売台数を伸ばしたのは、自動車以外の新興産業、ローエンド市場を開拓し、自分たちでブルーオーシャン市場をつくり出したからだ」
つまり、「日中逆転」の背景には市場拡大がある。では日系企業は競争力を維持できるのか。
PwCコンサルティングの薗田直孝シニアエコノミストは「中国企業の技術力が急速に高まっているとはいえ、まだ埋めきれていない領域は多い。そこを極めていくのが勝ち筋の1つだ」と語る。
中国企業には埋めきれない領域の1つが半導体製造装置だ。
アメリカの半導体輸出規制を受け、中国は急速に半導体の国産化を進めているが、国産化が進んでいるのは汎用品にとどまる。先端品にいくほど日系メーカーが強い。
日本最大の装置メーカー、東京エレクトロンは24年度の中国向け売上高が1兆円を超えた。同社の売り上げ全体の4割を占める。成膜装置を扱うKOKUSAI ELECTRICや、洗浄装置に強いSCREENホールディングスも中国向けが売上高の3〜4割を占める。中国市場は業界の「最大顧客」なのだ。日本半導体製造装置協会の小林章秀事務局長は「技術進歩が続いているうちはリードを保てる」とみる。
技術供与で事業拡大
中国企業には手が届かない技術を中国側にあえて供与することで事業拡大につなげた事例がある。ダイキン工業だ。
業務用エアコンで中国市場参入に成功したダイキンは、ボリュームゾーンであるルームエアコン市場への参入をうかがっていた。だが、販売ルートがなかった。浮上したのが、中国市場で販売網を持ち、急成長していた格力電器(グリー)との提携だ。
09年当時、格力はすでに世界市場の約30%のシェアを持っていたが、ほとんどがノンインバーターエアコンだった。インバーターとは、圧縮機を制御して室温をきめ細かくコントロールする技術で、インバーターエアコンはノンインバーターに比べて電力を3割減らせた。インバーター開発に注力しながらも技術の壁に直面していた格力は、ダイキンに提携を持ちかける。格力は、販売ルートの提供と引き換えにインバーター技術の供与を求めた。これにダイキンの経営陣、技術陣は猛反対する。


















