「お好み焼き3000円」とインバウンド価格が批判される黒門で、《マグロ一筋90年》老舗が貫く「まっとうな商売」の信念
「天然近海ものは脂が上品で、口に入れてもサラッとしてる。養殖は脂が乗ってる。サラダ油とラードに例えると、養殖はラード。口の中でとろとろするのが好きな人は、養殖がおすすめやね」
天然と養殖の違いを即座に言語化できるほど、マグロを知り尽くした丸山さん。しかし、プライベートではマグロをほとんど食べないという。
「品物をみるためにちょっと口には入れるけど、家では食べませんね。毎日見てるからちゃいますか? なんか食欲がわかないんですよ。何カ月も食べない時もあります」
マグロ屋の大将が、マグロを食べない。ちょっと意外な話だが、本人はあっけらかんとしたものだった。
「バリュー・フォー・マネー」を貫くマグロ屋
たしかな目利きによる、マグロの品質。それが魚丸が、三代にわたって生き残ってきた理由だろうか。そう問うと、丸山さんはうっすらとほほ笑んだ。
「いや、お客さんからの信用と信頼ちゃうかな」
その信頼を象徴する、ある強みがある。丸山さんはメモを一切使わずに、数千人の常連客の好みをほぼ覚えているのだ。「30年以上、年に一度だけ来る客」でも、顔を見れば好みの部位を思い出す。
なぜそんなことができるのか。
趣味で40年間バスケットボールを続けてきた丸山さんは、こう例える。
「取りやすいパスを出すのと一緒。お客さんが何を求めてるか、あらかじめ把握して動くことでしょうね」。続けて、「けど、最近は、顔は覚えているけれど、名前が出てこなくて」と苦笑いを浮かべた。
記憶力だけではない。丸山さんに、客から信頼される秘訣を重ねて問うと、意外な横文字が飛び出した。
「品質と価格のバランスが大切じゃないかな。バリュー・フォー・マネーを大切にしています」
バリュー・フォー・マネーとは、支払った金額に見合った価値という意味だ。それを守るため、百貨店や他店に足しげく通って相場を調べているという。「だからうちでは百貨店より安く買えます。しかも、より品質の高いものが」と自信を見せた。
インバウンド客が9割を占める黒門市場でも、バリュー・フォー・マネーの価値観は変えない。
「お客さんも馬鹿じゃない。コスパのいい、頑張っている店はやっぱりはやってるしね」とにっこり笑った。



















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