100円ツナ缶の時代に「瓶詰めツナ」で勝負した理由、9割の人に反対されても "ギフト需要"に賭けた高級路線の勝算
関根さんが新たな拠点として選んだのが静岡・焼津だった。焼津はマグロの水揚げ量日本一の港町であり、日本で初めてツナ缶の製造法が確立された、ツナと深い関わりを持つ地域でもある。駿河湾の海洋深層水が利用できることも大きな理由だった。
「ツナに使うマグロは、静岡県静岡内で水揚げされたビンチョウマグロの中から身の白いものを厳選しています。本マグロなどで試したこともありましたが、鉄分が多いため加熱すると酸味が出て、身も黒くなってしまうんです」(関根さん)
料理として完成されたツナ
一般的なツナ缶は、蒸したマグロをほぐして缶に詰め、オイルやスープを加えて殺菌する。一方、関根さんのツナは、スープで煮込んだ後にほぐして味付けし、瓶詰めにするという製法だ。
スープには精製塩を一切使わず、海洋深層水と利尻昆布、国産の干し椎茸、玉ネギ、セロリ、ローリエで味付けしている。甘みと旨み、香りをそれぞれ引き出す素材だけを残し、試行錯誤の末にこの配合にたどり着いたという。またオイルには、熱に強く酸化しにくい紅花油と米油、ごま油を使用している。
化粧箱には七宝柄を採用した。七宝は円が連鎖して続く吉祥文様で、「つながり」を意味する。ブランド名の「おつな」は、洒落て気が利いている「乙」であり、「ツナがりのある、とくべツナ人に贈るおツナギフト」という意味が込められている。
13種類の「おつな」を試食させてもらうと、ツナ缶とはまったく違う印象を受けた。ツナそのもののおいしさがダイレクトに伝わる「プレーン」、イタリア産ポルチーニ茸の香りとコクが加わった「ポルチーニ」、ドライトマトの旨みとにんにく、鷹の爪の刺激が調和した「アラビアータ」など、それぞれが料理として完成している。
そのまま酒の肴としても楽しめるし、パンやパスタ、サラダなどに用いれば主役の食材にもなる。その味の幅広さは、関根さんが料理人として積み重ねてきた経験によるものだろう。イタリアンやフレンチ、和食で培った味覚とセンスが、ツナという素材の可能性を広げているのだ。
「新しい味のヒントは、お店で食べた料理やスーパーの棚に並ぶ調味料など、日常のあらゆる場所にあります。なぜこの味付けなのかと考え、それをツナで試してみる。やっていることは料理人だった頃と変わっていません。今でもお客様の反応にドキドキしています」(関根さん)
ツナといえば、缶詰。そんな常識が長く続いてきた日本の食卓で、瓶詰めのツナという新しい形を提案する。焼津の小さな研究室から生まれたこの試みは、ツナという身近な食材の可能性を改めて広げようとしている。
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