キア・スターマー首相が率いる労働党政権は、公的債務残高が膨張した責任を、ライバル政党である保守党に負わせようとする。確かに、コロナショックを受けてイギリスの公的債務残高が急増した際、政権に就いていたのは保守党だった。保守党の下で悪化した財政を立て直すためには増税もやむなしで、その責任は保守党にあるというわけだ。
しかしこの理屈で言えば、2008年のリーマンショックに伴い財政が悪化した時の責任は、ゴードン・ブラウン元首相が率いた当時の労働党政権にある。景気が腰折れした際に経済対策は必要だから、それを受けて財政が悪化すること自体は致し方がない。問題は、その後に財政を健全化できるかどうかにあると言える。日本にも耳が痛い話だ。
スタグフレーション時代に「大きな政府」は合わない
以前から繰り返し指摘しているが、労働党政権の経済運営上の最大の問題点は、いわゆるスタグフレーション(物価高進と景気停滞の併存)の時代に、大きな政府路線を歩もうとしていることにほかならない。基本的に、大きな政府路線は、クラウディングアウト効果(公需が民需を圧迫する効果)を通じて、高インフレを長期化させてしまう。
大きな政府自体の賛否はさまざまだが、いまはタイミングが悪い。
本来、スタグフレーションを打破するために必要なことは、小さな政府路線に転じて公需を縮小させることだ。そうすれば民需が刺激され、さらに供給が増えることが期待できる。それを体現したのが、1980年代のイギリスだったはずだ。いわゆる「サッチャリズム」の下で、イギリスは規制緩和に努め、民間経済の活力を取り戻すことに成功した。
イギリスは金融面で規制緩和が先行しているが、一方で労働面などでの規制は厳しいままである。そうした規制を緩和していくことこそが、本来ならスタグフレーションの改善につながる。しかしながら、それは大きな政府路線を重視する労働党の党是と相反する。ゆえにスターマー首相とその側近らは、大きな政府にこだわるのだと推察される。
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