「魚肉ソーセージ50円」「刺身200円台」「ランチ500円」激安で人気だった≪さくら水産≫が“残すところ11店舗”まで衰退した納得の理由

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赤字覚悟で始まったランチ営業だが、背景には500円という安さを呼び水に、夜の居酒屋業態につなげる狙いがあった。目論見は成功し、作り上げた破格なブランドイメージを保つため、夜業態でも客単価は1800~1900円(2000年代当時)に据える薄利多売の戦略に出た。

2000年代を振り返れば、ワタミが売上高のピークを迎え、モンテローザが1500店舗を達成した時代だ。宴会需要も盛んで、大箱の居酒屋も盛況だったなか、“安かろう悪かろう”でも出店すれば客入りが見込める市況だった。さくら水産も勢いそのままに、1995年の創業から、2010年には160店舗近くまで拡大を見せた。

前出の営業部社員は「私が入社した2000年代前半は、すでに年間10店舗以上を新規展開していて、社員も2~3カ月の研修を終えると、即店長を任せられていた。それ以降も、後輩社員を1人で回せるよう教育して、自分は新店舗に派遣されての繰り返しでしたよ」と回顧する。

2010年頃から失速

矢継ぎ早に出店を進めていたさくら水産だが、綻びが見え始めたのは2010年前後だった。2008年のリーマンショックを皮切りに、働き方改革も進み、大人数での利用も減退。ボリューム層だった団塊の世代も、気づけば定年を迎えて客足が遠のき、薄利多売のモデルも行き詰まっていく。

結果的に、残ったのは大量のテナントだった。既存店も老朽化が進んでいくものの、改装やリブランディングに踏み切る体力に欠け、契約終了に伴い不採算の店舗を畳む流れが進んだ。

老朽化を感じる銀座3丁目店(筆者撮影)
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