物価高なのに「制服サブスク」はなぜ広がらない? 事業者「ビジネスモデルとして成り立たない」

品川区の制服無償化には「賛同できない」
家賃や人件費、買い取った制服の修繕費などのコストが見合わず、赤字に陥る店舗もある。
創業者の馬場加奈子さんは、「もうけたい気持ちは当然ありますよ」と本音を漏らす。それでも限界ギリギリの値付けにこだわるのは、自身がシングルマザーとして貧困に直面した過去をもつからだ。
「障害のある長女をふくめ3人の子育てに追われる中、『今日は何を食べよう』『明日には路頭に迷うかもしれない』と頭を抱える日々を送っていました。
当然、子どもの成長に応じて制服を買い替える余裕なんてなかった。その経験から2010年に高松市でさくらや1号店を立ち上げると、『こういうお店を待っていた!』と、大勢のお母さんたちに喜ばれました」
さくらやの顧客には、深刻な貧困家庭の人も少なくない。だが近年目立つのは、物価高の中で少しでも家計を切り詰めようと苦心する一般家庭の人たちだ。
馬場さんが最近営業に出向いた中学校では、女性の教頭が『トマトが高くて買えない』と嘆いていて、公務員にまで広がる生活苦を痛感したという。
インターネットで〈〇〇高校 制服 中古〉と調べる人が増えたり、「制服を安く買える店がある」と口コミで広がったりして、さくらやを頼る人々は増えるいっぽうだ。
だが馬場さんは、品川区が約1億円の予算をかけて行う制服の無償化には賛同できないと話す。
「正直、子育て支援を掲げて闇雲に税金を投入する“パフォーマンス”のようにも見えてしまいます。
たとえば、私服通学を認めて制服は着たい人だけが着る運用にすれば、保護者は出費の強要から解放されます。
子どもたちにも、『今日は体育があるから動きやすい服にしよう』などとTPOをわきまえる思考力が育つので、選択制の制服を取り入れる学校は既に出てきています。少し工夫すれば、お金をかけずにできる支援策はいくらでもあるんです」
制服の「サブスク」は地域性など特殊な条件が必要で、「リユース」は経営者が赤字覚悟で事業化している実態がある。
“隠れ教育費”問題が深刻となる今、民間に頼るばかりでなく、行政も意義ある支援の形を考えるべき時が来ている。
(AERA dot.編集部・大谷百合絵)
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