「食べ尽くしさん」と「確保さん」食を巡る人間模様 食卓に表れる無意識の行動と家族の力学を考える

複数人と食卓を囲むとき、ふと気がつくと、目の前の料理がなくなっていることがある。大皿料理を用意したはずなのに、「あれ? 私の分は?」と驚く。4人いて、エビが8匹、1人2匹の計算だったのに、なぜ私の分がないの? そんな経験はないだろうか。
私は幼少期から、たびたびこの光景を目にしてきた。実父が、出されている料理を好きなだけ食べてしまう人だったのだ。料理を作る母はキッチンから、家族4人分の量を大皿に盛り、食卓に並べる。父は出された分を好きなだけ食べる。
それにならった弟も出された分を好きなように食べる。唐揚げが12個あれば、4人家族なら1人3個と思うものだが、気づけば、唐揚げの大皿は空っぽになっている。母が食卓につく頃には、余ったおかずとご飯と味噌汁しかない。
人の分まで料理を食べる家族に違和感を抱くようになったのは、たしか中学生の頃だ。「なんでお母さんの分まで食べちゃうの?」と父に尋ねたら、「大皿で出ているから、食べたい人が食べたらいいんだよ」と返答があった。
父は本当にずっと、「出されているのだから好きなだけ食べていい」と思っていたのであろう。そこには「他の人が食べるかも……」といった視点はなかった。
食事は単なる栄養補給の場ではなく、家族の関係性や価値観が色濃く反映される場でもある。とくに「誰がどれだけ食べるか」というルールは、家庭ごとに微妙に異なり、無意識のうちに形成されているものだ。
父の「出されているものは何でも食べていい」という認識は、父が育った家庭で形成されたものなのだろうと思う。そして、母と結婚し自分の家族を持っても、母もとがめない以上、その姿勢は改められることはなかったのだ。
「食べ尽くしさん」とは?
「食べ尽くしさん」と呼ばれる人がいる(SNSを中心に「食い尽くし系」と言われることも)。私の経験を踏まえて過去に「大皿料理をバクバク食べちゃうひとの心理」というテーマでVoicyで話したところ、リスナーの方たちからたくさんの反響があった。
「食べ尽くしさん」は、食卓で大皿料理を目の前にすると、自分のペースでどんどん食べてしまう人のこと。悪気はないが、周りの人がまだ食べているかどうかをあまり気にしない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら