「食べ尽くしさん」と「確保さん」食を巡る人間模様 食卓に表れる無意識の行動と家族の力学を考える
結果的に、「自分の分がない!」と誰かが嘆くことになったり、「なんで自分の分をわきまえて食事ができないのか」「意地汚い」と本人の評判を下げることにもなる。
「食べ尽くしさん」になる背景を探ると、幼少期からの食卓の風景が見えてくることが多々ある。例えば、ある家庭では夫が大皿料理をパクパクと食べ続け、妻が「ちょっと! みんなの分がないじゃん」と声を上げる。
しかし、当の夫は兄弟が多く、「早く食べないと無くなる」という環境で育ったため、彼にとっては食べたいときに食べておくのが自然であり、配慮の欠如という自覚はない。
また、ある家庭では、母親が「餃子1人何個だよ」と子どもたちに声がけする中、父はお構いなしに次々と食べてしまう。この父は「男は好きなように食べてよい」という家庭環境で育った。妻の注意する声に「自分は含まれていない」と思っている。
こうした食べ方は、ジェンダーや生まれ順も大いに関係があると見える。「男の子はよく食べるのが良いこと」「家父長は率先して食べてよい」という暗黙のルールがあった家庭で育った人などは、無意識のうちに「食べ尽くし行動」を強化されてきたのだ。それゆえに、自分の「食べ尽くし」を、本音の部分では悪いことだとは思っていない。
また、食べ尽くしさんの中にも、無自覚に会社など公的な場でもやってしまう人と、自覚的に家族等の身内の前だけでやる人がいる。前者であれば恥を書くのが当人であるがゆえ仕方なく思うものの、後者であれば場面を使い分けている分、余計にタチが悪く感じる。
対抗する「確保さん」の登場
こうした「食べ尽くしさん」に対抗するのが、「確保さん」だ。「確保さん」とは、自分の分が食べられてしまうことを避けるため、あらかじめ自分の取り分を確保する人のこと。
例えば職場でお菓子をもらったときに、その場で食べないにもかかわらず、自分の分をすぐにデスクへ持ち去る人がいる。「確保しておかないと、誰かに食べられてしまう」と考えるのだ。
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