「最後の1人まで」イスラエルで続く解放の祈り 訪日した元人質、ノア・アルガマニさんの証言

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アルカディさんの属するベドウィンとは、砂漠地帯に住む遊牧民族である。イスラエルの南部に約30万人、北部に約11万人、その他の地域も含めると総勢で約45万人が居住し、イスラエル総人口の約3.5%に当たる少数派だ。イスラエル国籍を有するベドウィンはヘブライ語も話すが、母語はアラビア語でイスラム教徒である。

ハマスらテロリストにとっては、相手がアラビア語を話すイスラム教徒であろうが関係ない。イスラエルに住む人間は皆、彼らにとって「敵」なのである。同様に、イスラエル国籍を持つアラブ人や出稼ぎ労働に来ていたタイ人も、10月7日に拉致・殺害されている。

トンネル内でも許された祈り

アルカディさんの証言によると、監禁されていたトンネル内で祈りを捧げることは許されたという。食料は毎日与えられるわけではなかった。眠りから覚めて座り、そして祈る。そしてまた眠る。

昼も夜も区別できない中、いつ助けが来るのか、あるいはこのまま死んでしまうのか、筆舌に尽くしがたい日々を過ごしたことは想像に難くない。

救出作戦の詳細に関しては、機密事項も含まれるため、公式に語られることはない。今も監禁されている人質の安全にも関わるからである。1つ言えることは、ハマスのトンネル内にいた人質が救出されたのは、これが初めての事例ということだ。

この作戦は、シャバク(イスラエル総保安庁)、IDFのシャイェテット13、ヤハロムなどの特殊部隊が協力して実施された。救出される2週間ほど前、トンネルの向こうから掘削する音が聞こえてきたとアルカディさんは証言している。それは、特殊部隊がトンネルを探索する音だった。

それを聞いた見張りのテロリストらは、アルカディさんを残して逃亡した。その場で射殺することはせず、アルカディさんの周りに爆弾を仕掛けて立ち去ったという。

救出部隊が来たところで爆発させ、兵士も巻き添えにするつもりだったのだろう。結果的に、アルカディさんは無事に保護された。救出部隊がテロリストと出くわし、交戦することもなかった。

「私にとって最も重要なのは、残りの人質の解放です」。アルカディさんは、家族との再会を果たして安堵する中で、こう強調した。「私と同じように苦しんでいる人が、今もいるのです」。

先述の「アルノン作戦」では4人の人質が救出された。ノア・アルガマニさん(28)はそのうちの1人である。(「ハマスとの停戦めぐり揺れ動くイスラエル国民」参照)

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