「原価1000円超」独自進化した"天然"かき氷の凄み 天然氷は日光から仕入れ、1杯手回し132回のこだわり

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ひみつ堂は高品質にこだわった結果、中には原価で1000円を超えるメニューもあるという。前述のメロン三昧も7月にそれまでの1900円を2100円に値上げした。

「仕入れ代金が以前の1.5倍になった果物もあります。農作物なので天候にも左右され、酷暑や長雨だと生育環境に影響が出ます、来年も同じ量が確保できる保証はありません」

こう話す森西店主は、「大きさも変わりましたが、2000円を超えるメニューになるとは思ってもいなかった。ウチで修業して開業した元スタッフも驚いています」と本音を漏らす。

外食には「ふだん使い」と「イベント使い」があると思う。イベント使いでもテーマによって納得価格は異なり、例えば縁日で食べるかき氷なら500円~800円程度が許容範囲か。市販のシロップを使わず、高級フルーツをふんだんに使う天然氷が2000円超でも売れるのは、昭和レトロな空間でのごほうび飲食として支持されるのだろう。

暖冬で天然氷も減少、冬の集客は道半ば

景気の良い話を紹介してきたが、人気を支える裏事情は大変だ。

日光から仕入れる天然氷も、暖冬で寒い時間が短くなって生産量が減り、価格も上がった。原材料を運ぶ送料も上がっている。

「年間で約20トンの天然氷を使っていますが、年間に使用する氷をすべて天然氷でまかなうことが困難になってきました。昨年の採氷数が少なかったことから2024年8月末には純氷に切り替えて営業していきます」(森西店主)

季節商品だった天然のかき氷は通年商品になっており、東京・六本木の店などは深夜営業でも客が訪れる。だが、多くの店は真冬の集客に苦戦するという。

ひみつ堂は夏季(7月~9月)以外にはグラタンもあり、人気メニューだ。夏の半分以下の来店客数で運営スタッフを調整して営業するが、1月と2月は営業赤字だという。

「それでも十数年店を続けることができ、かき氷ブームで終わらせない工夫もしてきました。店の運営は毎日変化があり、お客さんが喜んで食べてくださるとうれしいです」(同)

薄氷を履む状況もあるが、日々向き合う中に生き残りのヒントが隠されているようだ。
 

高井 尚之 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

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たかい なおゆき / Naoyuki Takai

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『なぜ、人はスガキヤに行くとホッとするのか?』(プレジデント社)がある。

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