サイバー、絞られた「ポスト藤田」候補たちの実力 社長退任まで2年、後継者の選定作業はヤマ場に

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飯塚氏は、サイバーエージェントの一内定者にすぎなかった学生時代、開発したスマホアプリが藤田氏の目に留まり、勧められるがまま入社前に子会社・シロクを起業。入社後も主要部門を経ず、24歳で執行役員に抜擢された異色の人材である。

代表的な成果が、2017年にシロクで立ち上げたコスメブランド「N organic」。ECからリアル店舗にも進出し、四半期ベースで数億円の利益貢献をするまでに成長させた。

サイバーエージェントの主力事業は、広告であれば景気動向に、ゲームはヒットの有無によって売り上げが大きく変動しやすい。

そうした中で飯塚専務は、固定客との関係性を積み上げるコスメビジネスや、3年余り代表を務めたサブスクリプション型のマッチングアプリ『タップル』など、安定収益の見込める事業をコツコツ伸ばすことを強みとする。

同じ30代では、ブログサービス「Ameba」の広告営業で結果を残し、ABEMAの広告ビジネスを管轄する山田陸常務の名前も取り沙汰される。ただ、「山田常務も含め、多くの若手役員は営業や人望などに強みが限られる。飯塚専務の起業家としての実績、複数の子会社を俯瞰してきた経営スキルとは比べ物にならない」(複数の元幹部・社員)との声が聞かれる。

座学研修は終了、能力開発のフェーズへ

山内専務と飯塚専務の一騎打ちとも言えるレースにおいて、大穴と目される人物がいる。現在は採用戦略などを担う石田裕子専務だ。

20代で広告代理の営業統括に抜擢された実力者で、入社年次では山内専務の2つ先輩。採用や女性活躍推進、働き方の再構築プロジェクトなどを率いてきた石田専務の経験値は、藤田氏の「社員と会社の空気を丁寧に観察し、『この年に入社した社員からは子会社社長が出ているが、この代からは出ていない』とか、社内制度の浸透具合などに目を配っていた」(元幹部B)という側面とも合致する。

また、カリスマ創業者を抱える企業体質上、「みんな社長になることすら考えていなかった」(藤田氏)社内において、「石田専務は以前から上を強く意識してきた」(元幹部A)希有な存在とされる。これらの要素をもってして、山内・飯塚両専務をも"まくる"可能性があるというわけだ。

16人を対象とした、後継者育成プログラムの座学的な研修はこの3月で終了した。目下、後継者候補を数人に絞り込み、実務を通した能力開発のフェーズへと移っている。

ポスト藤田時代のサイバーエージェントは、待ち構える茨道を突破することができるか。藤田氏の30年弱におよぶ社長人生の総仕上げとなる「引き継ぎ可能な体制構築」が、正念場を迎えている。

藤田晋氏へのロングインタビューをはじめとする特集掲載記事は、東洋経済オンラインでも配信しております。※全文閲覧には会員登録が必要です。
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森田 宗一郎 東洋経済 記者

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もりた そういちろう / Soichiro Morita

2018年4月、東洋経済新報社入社。ITや広告・マーケティング、アニメ・出版業界を担当。過去の担当特集は「サイバーエージェント ポスト藤田時代の茨道」「マイクロソフト AI革命の深層」「CCC 平成のエンタメ王が陥った窮地」「アニメ 熱狂のカラクリ」「氾濫するPR」など。

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