「進学指導重点校」とは?東大合格者数トップ10に入る都立高校の教育水準 ハイレベルな入試問題に独自のカリキュラム
なかでも数学は難しく、自校作成問題の場合は受験者平均点が30〜40点台になる学校が多いです。計算問題では小数・分数が入り交じった複雑なものが出されます。文章題は、共通問題が選択式のマークシートであるのに対し、自校作成問題は記述式で、解答に至るまでの途中式や考え方も記さなくてはなりません。
英語は昨今、共通問題でも文章の長文化が目立ちますが、自校作成問題はさらに長くて問題数も多いです。英作文においては、100単語程度と長い記述指定も見られます。50分の試験時間で全問解き切るというのは、長文に慣れている生徒でも容易ではありません。
そして、このようにハードルの高い自校作成問題入試を突破した生徒を教えるのもまた、選ばれた教員です。進学指導重点校の教員は、教員公募制の狭き門をくぐり抜けて採用された、指導力に自信のある先生たちなのです。
前述の日比谷高校では、英語のディスカッションやディベートなど、「英語で考えて、英語で話す」という機会が多く設けられています。入学後間もない英語の授業でいきなり、 アメリカのCBSニュースをリスニングして穴埋め問題を解いたり、1年生の夏期講習や土曜講習で東大の過去問を解くといったこともたびたび行われているようです。
入学後の3年間で大学入試対策を完成させるというのは、入試対策をしない国立高校はもちろん、私立の中高一貫校とも異なる都立難関校独自の指導です。
私立高校の授業料無償化で都立高校は人気下降
2024年の都立高校入試の倍率は1.38倍で、前年の1.37倍から微増したものの、近年の都立高校入試は低倍率が続いています。
東京都中学校長会進路対策委員会の「都立高校志望予定調査」によると、都内の公立中学校に在籍する中学3年生うち、全日制の都立高校(昼間定時等除く)に進学を志望する生徒は63.29%で、前年度の63.54%から0.25ポイント減少。都立志望率は2017年度の71.15%をピークに、下降傾向が続いています。
背景としては、2024年から東京都の私立高校の授業料が実質無償化したことが影響していると考えられます。すでに2024年入試では、難関私立高校に合格した受験生が、難関都立高校の受検でさえも棄権するケースが増えました。
これまでは、日比谷高校をはじめとする都立難関校に合格した場合、開成高校や早慶附属高校などの私立高校を蹴って進学する例も少なくありませんでした。しかし、東京都の私立高校無償化における所得制限が撤廃されたことで、私立難関校に合格した時点で、その後に控える都立高校の受検を棄権する受験生が増えているのです。
都立高校の受検倍率の低下は、中堅以下の学校においてより顕著です。これが私立中堅校の人気上昇、ひいては私立中学受験率の上昇につながっています。高校受験の様相は現在過渡期にあり、今後当分の間は、「都立人気下降、私立人気上昇」のトレンドが続くと考えられています。
(注記のない画像:リョーさん / PIXTA)
執筆:教育・受験指導専門家 西村 創
東洋経済education × ICT編集部
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら