東大でのキャンパスライフでは「自由」を手に入れた。
大学卒業後は、東大大学院農学生命科学研究科へと進学。就職活動をしなかったのは「社会人になりたくない」と思ったから、いわゆる“モラトリアム”だ。
大学4年生で、かつて世話になった高校時代の恩師を訪ねた際に「大学卒業後の進路」を相談。
恩師の「せっかく東大の理系学部に入学できたんだし、大学院へ進んでみれば。社会人になってしまったら、大学院には進学しづらくなるよ」との言葉が、背中を押した。
親元を離れるために「就職して、行方をくらますか…」
大学院では、関心が「動物」から「植物」へと移った。ただ、「遺伝子工学」と取り扱う分野は変わらず。2年間の研究生活を経て、2022年3月に修了して“修士”の学位を得た。
当時、すでに“プロのアイドル”としてステージデビューも果たしていたという。その流れは、やや複雑だ。
アイドル“雲丹うに”として活躍する現在の所属グループ「Mirror, Mirror」が結成されたのは、2021年夏頃。
大学院の修了直前、2022年1月にグループは初ステージを迎えていた。
さらにさかのぼって、2021年秋。雲丹は、大学院の新卒として「秋採用」の就職活動もしていたとは驚く。
本音では就職したくなかった。しかし、厳しい両親のもとでは「アイドルになった」とは言えない。
そんなある日、実家では史上初の家族会議が開かれて「あんた、就職どうするの?」と聞かれた。
返す言葉もなく、内心で「いったん就職して、行方をくらますか……」と自問自答。
早く就職活動を終わらせようとして「東大院卒の肩書が重宝されそうな有名企業」に絞って「3社ほど」にエントリーした結果、大手銀行の内定を得た。
いわば、アイドルへの理解が薄かったであろう両親への「カモフラージュ」のために、大学院修了後の2022年4〜7月の約4カ月間だけは、銀行員とアイドルを兼業。
両親に内緒で退職手続きを進め、実家では一言「辞めるから」と結果だけを伝えた。
退職後は銀行のボーナスも含めた貯金を使い、念願の一人暮らしもスタート。本人の願いどおり、親元から離れたのち、専業アイドルとしてステージに立ち続けている。
アイドルは「向いている」と自信満々。
人を「褒めるのが得意」と自称する雲丹は「ファンの方々に直接『うれしい』『好きだよ』と伝えられる仕事は天職」と笑う。
今、力をそそぐグループ「Mirror, Mirror」でいつか「日本武道館のような大きなステージ」へ立つために。
「より上を目指したい」と語る表情には、覚悟があらわれていた。
*この記事の続き:「東大→東大院修了」高学歴アイドル悩む"肩書の葛藤"
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