朝ドラ「ブギウギ」最終回の前に早すぎる全体総括 「音楽朝ドラ」真骨頂に向けた趣里と伊原六花の功績

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「新人賞」部門は、福来スズ子の弟、六郎を演じた黒崎煌代で決定だろう。今回がデビュー作というまさに新人にもかかわらず、クセのある難しい役を堂々とこなした。

ただ、忘れがたいのは序盤で幼少期の福来スズ子を演じた澤井梨丘だ。歌が実に素晴らしかった。梅丸少女歌劇団の押しかけオーディション(10月6日)で歌った『恋はやさし野辺の花よ』は、このドラマの成功を強く確信させるものだった。今後に大いに期待。

次に「歌唱賞」(ただし歌・演奏そのものだけでなく演出まで含む)。ベスト5と、捨てがたかった次点まで発表したい。私はこう見た、そして、こう聴いた。

1位:『大空の弟』:趣里が生歌で披露した回:殿堂入り(12月7日)
2位:『センチメンタル・ダイナ』:趣里の歌と伊原六花のタップダンス(11月17日)
3位:『ラッパと娘』:趣里による衝撃の舞台初披露(11月10日)
4位:『恋はやさし野辺の花よ』:澤井梨丘の梅丸少女歌劇団オーディション(10月6日)
5位:『別れのブルース』:特攻隊員に捧げた菊地凛子の絶唱(1月5日)
次点:『恋はやさし野辺の花よ』:母親・水川あさみが亡くなる直前の趣里の生歌(11月23日)
次点:『ヘイヘイブギー』:水城アユミに見せつけた堂々たるパフォーマンス(3月22日)

以上に含まれない「特別賞」は、翼和希が止める中、蒼井優が梅丸少女歌劇団の労働争議を決断する回(10月20日)。趣里の大阪弁的「フラ」初披露のセリフ「ワテもう我慢できまへんわ! 何やさっきから聞いとったら! コラァ!」と、翼和希を抱きしめる蒼井優の印象度たるや。

最終回に向けて奇跡が起こるか

と、楽しく振り返り、『ブキウギ』を褒めちぎったのだが、最後の最後に冷静に判断すれば、「朝ドラを超えた朝ドラ」=『カーネーション』(2011年)はさすがに超えられなかったと、私は思う。

しかし、いやいや、『ブギウギ』はまだ、あと3回残っている。あと3回で奇跡が起こるかもしれない。奇跡が起きがちなのも、BK朝ドラの魅力の1つなのだ。

例えば……もし3月27日(水曜日)の第124回で放送予定の「福来スズ子歌手引退報告」でこう話したら、奇跡は起きる!――「2024年12月31日放送の紅白歌合戦が、『ブギウギ』の真の最終回です。去年叶わんかった福来スズ子としての出場や。『ラッパと娘』歌うでぇ。もちろん生歌・生演奏・生放送でっせ!」

スージー鈴木 評論家

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すーじー すずき / Suzie Suzuki

音楽評論家・野球評論家。歌謡曲からテレビドラマ、映画や野球など数多くのコンテンツをカバーする。著書に『イントロの法則80’s』(文藝春秋)、『サザンオールスターズ1978-1985』(新潮新書)、『1984年の歌謡曲』(イースト・プレス)、『1979年の歌謡曲』『【F】を3本の弦で弾くギター超カンタン奏法』(ともに彩流社)。連載は『週刊ベースボール』「水道橋博士のメルマ旬報」「Re:minder」、東京スポーツなど。

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