豪雪で露呈、オーストリア「看板特急」の落とし穴 ドア1カ所だけ故障でも「編成丸ごと」工場送り

拡大
縮小

運休こそ逃れた列車に関しても代替運行となり、ローカル列車などに使用される通常客車を使用した列車も見られた。レイルジェットは、ビジネスクラスと呼ばれる特等席を筆頭に通常の1等・2等車、そして食堂車を連結しているが、代替の列車にはビジネスクラスや食堂車は連結されず、サービスダウンは否めなかった。

OeBB UIC-Z1 CityShuttle
近郊用客車で代走となったフィラッハ行きレイルジェット(撮影:橋爪智之)

レイルジェットは、従来の客車特急列車インターシティの上位に位置する列車として2008年に誕生。客車ではあるが1両ごとに切り離しはできず、完全に固定された7両の編成を機関車が牽引・推進するもので、客車列車というよりは電車に近い。いわゆる高速列車ではないものの、最高時速は230kmに達し、洗練された内外装デザインも含め、従来型客車の旧態依然としたイメージを打ち破る車両となった。

レイルジェット 1116形牽引
最高時速230kmのレイルジェット。7両編成の客車の一端に機関車を連結して走る(撮影:橋爪智之)

2016年までの間に60本が製造され、チェコ鉄道にも同型車両が7本納入された。現在は、ウィーン―ザルツブルク間などの主要幹線において、新幹線で言うところの「のぞみ」や「こだま」のような、速達タイプ(RJX)と各駅停車タイプ(RJ)が設定されるなど、オーストリア国内における都市間輸送の大半をこのレイルジェットが担う形となっている。

1両ごとに切り離せないレイルジェット

今回、運行開始以来大きな問題のなかったレイルジェットに、記録的な大雪と寒波という想定を超えた異常気象が襲ったことで、不具合が多発してしまった。さすがのオーストリア連邦鉄道もここまでの異常気象は想定していなかったようだが、それを差し引いても予備車がほとんどない状態で運用を回している現状について、見通しが甘かったのではないかという声も聞かれた。

予備車不足の問題もさることながら、もう1つ大きな問題となったのが、固定編成のレイルジェットならではの「不具合発生に伴う編成全体の離脱」だ。

客車の利点の1つとして、柔軟な編成が組めることが挙げられる。乗客の増減に合わせて1両単位で車両を連結・切り離しできるので、鉄道会社によっては団体客が乗車する日に1両追加で連結するということもやっていた。

関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT