またゲームをすることも、認知制御といった脳の機能にいい影響があるとされている。何か新しい挑戦を経験することも、それが旅行であれ、あるいはクロスワードパズルやジグソーパズルであれ、高齢になっても脳の健康を保つ助けになる。
中でも特に影響が大きい要素は教育であるようだ。最近の研究によると、学士号を持つ80歳の女性の記憶力は、平均すると高卒の60歳の女性の記憶力と同程度になるという。
研究者たちはこの結果を受けて、4年間長く教育を受けることは、20年間の加齢による記憶力の低下を補う力があると考えた。
「マルチリンガル」の特質
マルチリンガルには、音楽の訓練に伴う聴覚の向上、読むことに伴う単語と意味のつながりの強化、ゲームをすることに伴う認知制御の拡大、刺激のある活動をすることに伴う脳の健康向上、教育に伴う学習能力の向上、運動に伴う認知症の予防といった利点をすべて実現してくれる力がある。
メタ分析(複数の研究を対象にした分析のこと)によると、バイリンガルであることが認知機能に与える影響は、運動が認知機能に与える影響とだいたい同じだという。
マルチリンガルだけの特質をもう1つあげるなら、それは新しい言語を習得してしまえば、後は特に何もしなくてもマルチリンガルであることの利点を享受できるという点だ。
脳に刺激を与える他の活動、たとえば大学に通う、クロスワードパズルや数独を解く、運動をする、本を読むといった活動の場合、効果を上げるためにはその活動をずっと続けなければならない。そのためには時間が必要であり、ときにはお金が必要になることもあるだろう。