「誰かを罰するのは当然か」問う『失敗の科学』 ベテラン機長が"容疑者"になった航空機事故

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霧の中を着陸する飛行機
飛行の安全には「犯人探し」より重要なことがあります(画像:Barmaleeva/PIXTA)
東京国際空港(羽田空港)で発生したJAL A350型機と海上保安庁DH8C型機の衝突事故。事故の原因について数々の臆測が飛び交う中、SNSではマシュー・サイド著『失敗の科学』の内容について言及する発言が多く見られます。改めて同書から一部を抜粋、再編集し、事故後の対応や「失敗から学ぶ」姿勢が将来の事故を防ぐ手立てになることなどについて4回にわたって考えています。今回は4回目です。
1回目:羽田事故のあと話題『失敗の科学』が伝えること
2回目:「航空業界の失敗から学ぶ姿勢が導いた「奇跡」
3回目:「事故の責任は誰にある?」非難が無意味な理由

航空業界では通常ミスを罰しない。こうした姿勢から、彼らは「公正な文化」を実践するリーダーだと考えられている。

しかし、イギリスで起きた「ノベンバー・オスカー事件」と呼ばれるニアミス事故に関して言えば、航空業界は関係者を非難した。そして歴史上初めてイギリス人パイロットが裁判にかけられた。

この事件は、非難がもたらすリスクを理解している航空業界でさえ、誘惑に負けてしまうことを物語っている。

イギリスの航空史上最悪の大惨事を「回避」

ウィリアム・グレン・スチュアートは、ブリティッシュ・エアウェイズのベテランパイロットの1人だ。

事故当日の1989年11月21日、彼は機長として、バーレーンからロンドン・ヒースロー空港まで通常ルートを飛行していた。同乗者は航空機関士のブライアン・レヴァーシャと、29歳の副操縦士ティモシー・ラフィンガム。

事件の概要は次の通りだ。

ボーイング747機(コードネーム:ノベンバー・オスカー)はバーレーンを飛び立ち、やがて欧州空域に入った。ちょうどその頃、クルーはヒースロー空港が濃霧に覆われ約1m先までしか目視できない状態だと連絡を受けた。機長は「計器着陸」を行わなければならなかった。

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