実は留学生も多い「防衛大」なんとも独特な実態 「息が詰まる」…各国を担うエリートたちの本音

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「軍役を終えたらMBAを取ってビジネス界に行きたい」と本音を漏らすアメリカの留学生、「韓国よりも日本のほうがいいよ。空気が自由だから」と日本びいきになる韓国の留学生、「俺もみんなと一緒に陸上自衛隊に行きたい」と語るモンゴルの留学生など、「実はそう思っているんだな」という生の声を聞くことができます。

そんな留学生のエピソードについて、いくつか紹介します。

西欧諸国の学生にとって「防大は息が詰まる」

留学生からよく聞く防大の特徴としては、「規律が非常に細かい」が挙げられます。西欧の士官学校は「学生の自主性」を重視して学生による自治が認められていますが、防大は基本的に教官の介入ありきです。「所詮は学生」という意識が強いため、ほぼ自由度はありません。アメリカの留学生は、「何もかもが規律で決まっていてうんざりした。そして教官の介入が多い」というせりふを残していました。

また、整理整頓や物品管理の意識が非常に強く、モノを1つなくしても大捜索になります。このような状況を西欧諸国の留学生が見れば、「探す時間があるぐらいなら支給すればいいのに」と考えるようです。実際に留学生に訓練用の小銃を渡し、彼が部品を紛失しても「えっ? 探さなきゃいけないの? 部品ぐらいあるでしょ」という反応が返ってきたことがあるようです(防大生とはまったく違う感覚ですね)。

また、西欧諸国の士官学校は国によっては部屋も個室を与えられ、学校内にバーやビリヤードなどの娯楽施設が併設されていることもあり、防大より息抜きの場も多いようです。そうした理由から、西欧諸国の留学生から見ると、どうしても防大は「息が詰まる」という印象を持たれやすいようです。

一方で、新興国(モンゴル・東南アジア)の留学生からは、防大は人気が高い印象でした。

留学生にも毎月10万円ほどの手当が支給されますが、この金額はインドネシアなどでは大卒1年目の給与の2倍であり、高級将校の金額に匹敵します。また、新興国の士官学校は「必要とあれば体罰可」の風習が未だに根強いらしく、そうした事情を考えると防大は「穏やかで綺麗で最高」とのことでした。

新興国の留学生はとにかく七難八苦に強く、訓練で活躍します。

モンゴルの留学生は体幹が恐ろしく強く、「どうして強いの?」と聞いたら、「3歳から馬に乗って草原レースに出ていた」と答え、カンボジアの留学生は行軍にめっぽう強く、どうして強いのかと聞いたら「小学校まで10kmの山道を歩いていたから、歩くのは慣れている」と返ってきたことがあります。私は「それは強いわ」としみじみ思ったものです。

また、タイやインドネシアの留学生は暑さに強く、真夏の訓練でも「自分が住んでいた場所よりもマシ」と平気な顔をして、汗もあまりかきません。こうした彼らを見て、「日本人とはスペックが違うんだなぁ」と思ったものです。

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