食品の値上がりで「濃い味」が売れている?の真相 “濃い=おいしい"というわかりやすい贅沢感

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「濃い系の緑茶飲料は“内臓脂肪を減らす”といった機能性表示食品となっているものも増えていて、機能面でも注目されています。味の濃いラーメンや、脂っこい食事の罪悪感を打ち消す“免罪符”という意味合いで手に取る人も多く、食品の濃い味トレンドと呼応するかたちでこの先も伸び続けると思います」

(左)細切りのジャガイモを丸い形に整えた『濃いじゃが アンチョビオリーブ』(湖池屋)、(右)味付け調味液を従来の1.5倍にアップした『濃い味極卓上10切50枚』(ニコニコのり)(画像:週刊女性PRIME編集部)

食品分野においても、濃さを謳う商品が続々と発売されている。例えば、『明治北海道十勝スライスチーズ』(明治)の商品ラインナップには、3月1日から〈濃い味〉が新登場。同社によると、「通常のスライスチーズでは物足りなく感じることがある」といった消費者の声を商品開発に生かしたという。また、ニコニコのりは『濃い味極卓上10切50枚』という新商品を3月1日に発売。味付け調味液を従来の1.5倍塗布した濃い味わいで、ご飯のおともにはもちろん、そのままおやつやおつまみとしても楽しめる。

そもそも“濃い”というのは、ものすごくわかりやすい付加価値です。消費者のあいだにも“濃い=おいしい”という絶対正義のような価値観がどこかに根づいていることは、マーケティングの手法のひとつであるA/Bテストなどでも見えてきます。シンプルでわかりやすく、訴求力のある“濃さ”を謳う商品を売り出すのは、値上げラッシュの最中においてある意味では王道の戦略ともいえます

どうせ買うならとことん濃いものを!

お菓子やスイーツのジャンルでも濃厚路線は継続中だ。ウエルシア薬局株式会社は4月9日からプライベートブランド商品として『ちょこっと食べたらまた食べたくなるハイカカオチョコ』を発売。カカオ72%の商品で、健康増進効果や美容効果に期待が寄せられている。一方、湖池屋は昨年10月に関東エリア先行で発売していた『濃いじゃが アンチョビオリーブ』を、4月3日から全国発売に。カリカリポテトに濃厚ソースが染み渡る“高密度ポテトチップス”は、先行販売でも好調な実績を残した。

さらには、インスタントラーメンの分野でも3月20日に『日清麺職人 濃いだし 煮干し醤油』(日清食品)が発売されるなど、「特濃」「濃いだし」「超こってり」といった文言はもはや即席麺業界では定番となっている。

「ハイカカオのような機能性重視のヘルシー路線が定着している一方で、外食分野でもガツンと濃厚な味わいの商品は多く、食のセレクトが完全に二極化しているように思えます。多少塩分が高いものやハイカロリーなものを“罪な味”として、背徳感をどこか楽しむようなカルチャーも若い人のあいだで生まれていますね。SNSなどでは健康的な食事よりはちょっとヤンチャな食べ物のほうがバズりやすいというのも理由のひとつ。“ヘルシー疲れ”を感じていたり、ストレス解消として濃いものをガッツリいきたいという潜在ニーズも、もちろんあると思います」

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