WBCの大ブームの根底にあるのは日本の枠を超えた「『世界』への憧れ」ではないか。コロナ禍、円安と長く続く閉塞感のなか、日本人は、WBCで活躍する日本人選手たちを通してその向こうに広がる「希望の青空」を見ているのだと思う。
子供たちに再び「野球ブーム」到来するか
これまでも侍ジャパンの大活躍の後、子供たちの野球人気が復活する現象が見られた。JSPO(公益財団法人日本スポーツ協会)が発表しているスポーツ少年団の男子軟式野球団員数は、2002年には15万9659人だったが、2005年は15万7858人と足踏み状態だった。
しかし2006年の第1回WBCで松坂大輔、イチローの活躍で日本が世界一になると2006年は16万4798人、2007年は17万0548人と急増。日本が連覇した2009年には17万3978人まで盛り返した。
以後、スポーツ少年団の男子軟式野球団員数は、減少が続き最新の2021年度では10万7033人まで減っている。地域によっては小学生の野球チームが消滅したところまででてきた。
結局「甲子園→プロ野球」という従来の日本野球が提示できた「夢」は陳腐化し、子供たち、そして親に野球を選択させるモチベーションにはならなくなった。
それに代わって「プロ野球→WBC→メジャーの舞台」というはるかにスケールの大きな「夢」が、子供たちに野球への関心を再び高める可能性がある。侍ジャパンがこの人気のままにアメリカでも活躍し、3度目の世界一になれば、大人も子供も巻き込んだ「野球ブーム」が到来する期待感もある。
日本戦4試合の地上波放送の平均世帯視聴率は連日40%を超えた(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。いまどきのテレビでは驚異的だ。
大事なのは、このブームを一過性に終わらせることなく、競技人口を増加させる取り組みにつなげる「工夫」だ。野球界の手腕が問われるが、これを契機に長期低落に歯止めをかける期待もある。
グループBを1位で通過した侍ジャパンは、いよいよ「負ければ終わり」のノックアウトステージに進出する。大げさに言えば彼らの肩には「野球の将来」もかかっている。活躍を見守りたい。
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