富士通「本質的でない仕事」を週2時間削減のワケ 単純作業が減って得られた、2つの効果とは?

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社内で実施したPoC(Proof of Concept : 新しいアイデアの実現可能性の実証を行うこと)をきっかけに、ワークスタイルを改善した企業がある。大手ITベンダー、富士通だ。ツールを導入したことで、「仕事のための仕事」に費やす時間が、約3割減少。1人当たりに換算すると、週に約2時間の削減となる。一方で、チームでのディスカッションなど、より本質的な業務に割くリソースが増加。業務効率が大きく高まった。この明確な効果は、いかにして生まれたのか。

Asana導入で、仕事の“快適性”が向上

富士通が社内コンテスト「New Work Style Challenge!」を行ったのは、2022年7~9月のことだ。「各人が楽しみながら業務の効率化を追求し、最大のパフォーマンスを引き出す」というコンセプトの下、約3カ月間にわたって開催された。コンテストを運営した、同社デジタルシステムプラットフォーム本部 石橋太氏はこう振り返る。

「当社では20年7月から、PoCの一環として各部署でワークマネジメントツール『Asana』を導入しました。Asanaは各部署から高い評価を受けていて、私自身、毎日Asanaを使用する中でその利便性、有用性を確信していました。この流れの中で、Asanaのベストな使い方を見つけ、富士通の中で最大限の効果を発揮する方法をつくり出そうと考え、実証プロジェクト『New Work Style Challenge!』を開催することになったのです」

富士通 石橋 太(ふとし)氏
富士通 デジタルシステムプラットフォーム本部 Global Head Office
石橋 太(ふとし)

狙いは、単なるAsanaの使い方の共有ではない。Asanaによってワークスタイルを根本から変革し、より快適に働ける環境をつくろうと考える社員を、会社として支援することだ。

こうして公募されたNew Work Style Challenge!には、社内の各部署から計16チームがエントリー。約3カ月間Asanaを使用して、仕事の質と量がどれだけ改善されるかを競った。11月初めには金・銀・銅の入賞チームが発表され、賞金としてワーケーション費用が贈呈された。

単純作業を軽減し本質的な業務にリソースを割けるように

入賞チームでは具体的にどのような変化が起きたのか。金賞に輝いたのが、社内コミュニケーションのプラットフォームを運営するチームだ。具体的には、それまで業務報告のためだけに行われていたミーティングを、Asanaを活用してナレッジ共有の場に変えたり、社内の問い合わせ対応にもAsanaを活用したりと、多角的な業務改善を実現した実績が評価された。

銀賞を受賞したのは、社内共通サービスの活用法を伝えるコンテンツの作成チームだ。リーダーの渡邉氏は、Asana導入により、業務が「劇的に快適になった」と語る。

「作業の進捗共有をAsanaに置き換えたことで、資料の作成や読み上げにかかる時間を大幅に削減でき、代わりにノウハウの共有やディスカッションに2倍以上の時間を費やせるように。さらに雑談交じりのリラックスした会話も生まれ、メンバーの個性が見えてきたことが、チームビルディングにもつながっています」

そして、「今やチーム内で完結するタスクは、基本的にすべてAsana上にまとめている」と話すのが、銅賞を受賞したチームのリーダー・長田氏だ。同チームは、広報・プロモーションの促進を手がけている。

「チーム創設から間もない頃、利便性の高い業務管理ツールを探していたところにAsanaを紹介されました。Asanaならチームのタスクを一覧できるうえ、各人の作業量が一目でわかり、今後の進捗もつかみやすい。定期的なチーム会議も、Asanaのポートフォリオを見ながら行っています」

Asana活用が富士通にもたらした、2つの効果

富士通社内で見られた、Asana活用による効果は2つに大別される。まずは、業務の可視化による作業効率の向上だ。業務プロジェクトやそれにひも付くタスクが一覧になっているため、全体を俯瞰しながら効率的に業務を進めることができ、漏れも抑えられる。加えてその“見える化”機能を活用することで、共有作業の省力化も図れる。コンテスト参加者からは、以下の声も上がった。

「業務を俯瞰できるポートフォリオ機能が、非常に便利です。すべてのプロジェクトが一覧できるうえ、工数や現在の状況、マイルストーンもすぐ把握できます」(グローバルヘッドオフィス 淺間氏)

「各メンバーの作業量が可視化され、誰かがピンチのときはアラートも出るので、メンバー間での助け合いも促せます」(グローバルビジネス統括部 Eve氏)

こうした取り組みの結果、今回参加した16チームでは、資料作成や業務報告といった「仕事のための仕事」が1人当たり週380分から265分へと減少。1人につき週に約2時間、月に7.6時間を削減できた形だ。

New Work Style Challenge!による富士通の変化
New Work Style Challenge!により「仕事のための仕事」が削減され、より価値の高い作業にリソースを割けるようになったのは大きな成果だ

Asana活用の成果として挙げられるもう1点が、本質的な業務の活性化だ。上述のとおり「仕事のための仕事」が大幅に減ったことで、ディスカッションやナレッジの共有がスムーズになり、エンゲージメントも向上したという声が多く聞かれた。ITツールの活用によって、かえってコミュニケーションが深まった点が興味深い。

「上司に承認を得る作業は普段2~3日間をかけることが多いですが、Asanaを使ってワンクリック『承認依頼』の『タスク』を直接上司に送付するだけで『承認』が得られます。おかげで報・連・相のハードルが下がり、頻度は体感値で2倍ほどになりました」(Eve氏)

「仕事の進め方は変えられる」気づきが、最大の収穫

コンテストを統括した石橋氏も、Asana導入の効果を強く実感している。

「Asanaを導入したことによる最大の効果は、長年同じやり方で行われてきた業務もAsanaに置き換えることができるのだと、多くの社員が気づいたことだと思います。私自身、単純作業を圧縮できたことで、ディスカッションやフィードバックなどメンバー同士の会話を要する本質的な業務に時間を割けるようになり、とても有意義だと感じています。Asanaのカスタマーサポートにも、多々助けられました。

さらに、幹部クラスとの会話もしやすくなりました。例えば私がCIOに毎月行っているプロジェクトの報告は、Asanaのステータスを伝える形で行っています。ステータスを更新したり、タスク内でメンションしたりすると、CIOから直接“いいね”が飛んできます。こんな世界が当社に訪れるとは、思ってもいませんでした。まだ、当社全体でこれができているわけではありませんが、小さくとも確実な変化の1つだと感じています」

参加者からは、社内コンテストの実施そのものがワークスタイル変革の後押しになったとの声も複数聞かれた。

「すでに定型化している仕事の進め方を変えるには、相当なパワーが必要です。社内イベントに参加して具体的な目標を設定したり、他部署と情報交換したりすることが、そのきっかけになると感じました」(渡邉氏)

どんなに便利なツールでも、新規に導入して社内に浸透させるには、それなりのハードルを越える必要がある。コラボレーションイベントやカスタマーサポートといったリソースを最大限に活用することこそ、DX成功に向けた1つの解といえるだろう。

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