富士通が挑む「仕事のための仕事を撲滅」の背景 1チーム当たり週7.5時間を創出した秘密

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2020年7月にキックオフした、富士通のDXプロジェクト「フジトラ」。世界180カ国でサービスを提供し、国内外で12万4200人もの従業員を抱える(21年3月末現在)巨大グローバル企業は、組織のあり方やカルチャーにも変化をもたらすDXをいかにして実現しているのか。担当者の取材から、舞台裏を探った。

「DよりもXを重視」富士通流のプロジェクト

全社を挙げてDXに取り組む狙いについて、富士通の小久保義之氏はこう語る。「目指すのは、技術とデータを駆使した新たなサービスを提供できる企業への進化です。そのためには富士通自身がDXを実現させ、それをフレームワーク化してお客様に届けることが必要だと考えました」。

富士通 デジタルシステムプラットフォーム本部 小久保義之
富士通 デジタルシステムプラットフォーム本部DX Officer
小久保 義之

フジトラが目指すのは、単なるIT活用ではない。デジタル(D)を踏まえてトランスフォーメーション(X:改革)を実現することが最終的な狙いだ。

「フジトラには大小150ものプロジェクトがあります。これらの推進に当たり、改革の重点テーマとして『経営のリーダーシップ』『現場の叡智を結集』『カルチャー変革』の3点を掲げました。これにのっとり、まずは部門やグループを横串で横断する体制を整備。全社を縦横につなぐ体制の下、経営がリーダーシップを取り、現場のノウハウを最大限に生かして、粒度の異なるさまざまな課題解決に挑んでいます。さらにカルチャー変革としては、社員一人ひとりが富士通の存在意義や業務の目的、つまり『パーパス』を見つめ、それを胸に仕事をすることを目指しています。業務プロセスの改善はもちろん、事業戦略や新事業創出、人を活かす制度や環境の組み合わせで、DXが実現できると考えています」

Asana利用者は、開始から1年で約10倍に

DXの施策として象徴的なものが、ワークマネジメントツールAsanaのトライアル導入だ。その背景を、石橋太氏はこう語る。

「まずは150あるプロジェクトの分類、状況把握、目標の設定、それに対する現在地などを整理し、公開する仕組みが必要。それに役立つプロジェクト管理ツールを検討したところ、Asanaがぴったりだという結論に至りました」

富士通 デジタルシステムプラットフォーム本部 石橋 太
富士通 デジタルシステムプラットフォーム本部
Global Head Office
石橋 太

Asanaを選んだ理由は「マルチホーム」「豊富なテンプレートとカスタマイズ性」「ポートフォリオ機能」の3つだという。

「フジトラは1つのテーマに複数のプロジェクトがひも付けられて進行しています。Asanaはそれらを一括で管理できること、各プロジェクトに合わせて細かくカスタマイズできることがメリットだと感じました。また、ポートフォリオ機能を使えば、特定のテーマの進捗状況を確認することもできます」

Asanaの導入・展開に当たって、石橋氏らは、社内で利用しているチャットツール上に「よろず相談窓口」を開設。Asanaのナレッジを発信するとともに、利用者が問題を解決するためのハブとして活用した。こうした工夫を加えながら徐々にAsanaの利用者を拡大していった結果、富士通全社でのAsana利用者は、開始から1年で約10倍に増えた。

「現在は、ワークスタイルを変革するプロジェクト『New Work Style Challenge!』を実施しています。これは業務生産性だけではなく、仕事の質を上げることを狙いとしています。一人ひとりが自分の目指す姿を考え、それを組織が支援していく取り組みです」

石橋氏らは、組織の枠を超えてAsanaユーザーと情報交換できるAsanaアンバサダーにも登録。「今後さらに、Asanaアンバサダーを増やしていきたい」(石橋氏)と将来を見据える。

「Asanaを活用している人の特徴」を捉えるのが重要

トライアル中ながら、富士通社内で着実に浸透してきたAsana。その裏には、グローバルマーケティング本部の徹底したリサーチと分析があった。同部の木下薫氏はこう振り返る。

「2021年7月に、グローバルマーケティング本部でもAsanaのトライアル利用を開始すると、まず本部横断プロジェクトにアカウントを配布しました。ログイン履歴からその利用状況を把握し、活用している人の特徴を捉えた結果、業務内容に応じてアカウントを配布することが肝だとわかったからです」

富士通 グローバルマーケティング本部 DX企画部 木下 薫
富士通 グローバルマーケティング本部 DX企画部
木下 薫

当時、本部横断プロジェクトのメンバーからニーズを聞き出したところ、3つの気づきがあったという。

「1つ目は、Asanaには工程のある業務が適しているということ。2つ目は、多くの人にAsanaを使ってもらうには機能や操作方法の案内だけではなく、具体的な使い方の提案が重要だということ。3つ目は、類似業務の管理を行うテンプレートの活用がカギになるということです」

この気づきを基に、木下氏はAsanaのどの機能がどの業務に適しているか、ほかの業務への応用は可能かなどを研究した。不明点が生じると、Asanaに相談して解決したという。

「そのうえで、Asanaとの相性がいい部門の社員をターゲットに、Asanaの導入・利用促進活動を開始。それぞれの業務内容に合わせた使い方を個別に提案していきました。今後も利用状況のデータ収集・分析を継続し、さらなる利用促進活動に役立てていきたいです」

1チーム当たり週に7.5時間のリソースが生まれた

Asanaは、マネジメントの課題解決にも役立っているという。その内容について、加藤寛隆氏はこう語る。

富士通 デジタルシステムプラットフォーム本部 加藤 寛隆
富士通 デジタルシステムプラットフォーム本部
エンタープライズサービス統括部
加藤 寛隆

「マネジメントレベルでは、2つの課題がありました。1つは、会議に向けた報告用の資料の作成とレビューに多大な工数がかかること。とくに、資料の体裁を整える工程に時間がかかっていました。もう1つは、確認するためだけのコミュニケーションが多かったこと。『あの仕事の進捗は?』『リソースはどれくらい空いている?』など、上司から部下への確認作業が頻繁に行われていました。上司は部下から返事がくるまで仕事が進められず、部下は上司への返答のためにたびたび仕事を中断せざるをえず、集中がそがれてしまうという問題を抱えていました」

Asanaは、こうした課題の解決方法にもなっている。ポートフォリオ機能を使えば、各プロジェクトの進捗が一目でわかる。担当者と都度会話をする必要がないうえ、一覧化したデータはそのまま社内報告に使えるため、資料用に体裁を整える必要もなくなった。

「こうした効果は、さっそく数字に表れています。資料の作成やレビュー、上司への進捗報告といった『仕事のための仕事』にかかるリソースが、1チーム当たり1週間に7.5時間分削減できました。今後、さらなる効果を生みたいと考えています」と、加藤氏は胸を張る。

フジトラの成功を支える有効な一手となりうる、Asana。こうしてスタートを切った富士通の「ワークマネジメント」は、今後も加速していくことだろう。

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