在宅勤務をただの「働く場所改革」にしないコツ 改善すべきは場所よりも「仕事の管理方法」だ

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日本でも急激に浸透してきた、テレワークや在宅勤務。いま多くの企業が、ITツールを活用しながら自社に最適な働き方、労働環境のあり方を模索している最中だ。しかし、不要な会議や膨大なメールの処理など、生産性が低い割にリソースを消費する「仕事のための仕事」もまだ多い。そうした無駄を省き、真に働きやすい環境をつくるためには何が必要とされているのだろうか。

無駄な「仕事のための仕事」が大量発生する理由

今、変革を迎えつつある私たちの働き方。在宅勤務は、家と会社の往復をなくして労働生産性を上げるほか、家族と過ごす時間を増やしたり、休み時間に雑事をこなせるというメリットもある。

しかし一方で、「どうすれば、家でもオフィスと同じ量の仕事をこなせるか」「全員が正しくツールを使いこなすのは難しい」といった疑問・不安を抱える企業も少なくない。個人レベルでも、在宅勤務ではオンとオフのメリハリをつけにくくなってしまうというストレスを生じがちだ。真の「働きやすさ」にはまだ遠く、課題が山積している。

Asana Japan 株式会社 代表取締役ゼネラルマネージャー
田村 元

通信環境やITツールが高度に発達し利便性が増しているにもかかわらず、今なお日本のビジネスパーソンがこのような状況に陥っているのはなぜか。Asana Japanの田村元氏はこう解説する。

「日本の労働生産性はかれこれ20年以上『先進7カ国中最下位』(※1)という状態。そのいちばんの原因は、日本企業の多くが『仕事の成果を時間で測る』文化に浸かり、労働効率性を度外視してきたことです。例えば製造業の生産現場では、数十年前から生産性を重視したマネジメントがなされ、世界的にも高いレベルに達していました。しかし、いわゆる知識労働者(ナレッジワーカー)については単純に『労働時間=仕事の成果』とみなされ、それ以上の十分な検討はされずにきました。これが、今になって大きな摩擦を引き起こしているんです」

メール対応や会議への出席などが、長い労働時間の原因となっている

数年前から、多くの企業で「働き方改革」が進められてきたことは周知の事実。しかしAsanaの調査によれば、日本のナレッジワーカーの約80%が、自宅やオフィスで夜遅くまで働いている。在宅勤務やテレワークがどれだけ浸透しても、仕事の進め方が変わらなければ、単なる「働く場所改革」にすぎない。労働生産性の向上とはまったく別次元の話である。

「これはタスクの管理や計画、整理が適切になされていないから。『たくさんのメールの中から必要な情報を探す』『上司に進捗を報告する』といった、利益を生まない割に負荷がかかる『仕事のための仕事』が大量に発生しているからにほかなりません。この状況を打破するには、単にプロジェクト管理ツールを導入したり、在宅勤務を始めたりするだけではまったく足りない。仕事の成果の測り方について、根本的に考え直すことが求められていると思います」(田村氏)
(※1)日本生産性本部「労働生産性の国際比較」

「ワークマネジメント」で、日本経済を生き返らせる

Asanaの調査によると、一般的なナレッジワーカーは、「仕事のための仕事」に約6割の時間を割いている

そこでAsanaが提唱しているのが「ワークマネジメント」という概念だ。これは、仕事にかかる膨大な調整業務を1つのプラットフォームで管理し効率化することで、無駄な作業を減らして労働生産性を向上させるという考え方だ。

「成功するプロジェクトには共通点があります。それは、イノベーションをもたらして世の中を変革するために、チーム一丸となって協力しあっていること。しかし実際には、多くの人が『仕事のための仕事』に時間を奪われています。ワークマネジメントによって仕事の効率化を図れるだけでなく、チームメンバーと成果を分かち合うことができ、会社へのエンゲージメントが格段に向上します」(田村氏)

そもそもAsanaは2008年、Facebookの技術責任者だったダスティン・モスコヴィッツによって創業された。仕事を一元化してワークマネジメントをサポートするクラウドサービス「Asana」で知られ、12年のサービススタートから順調に顧客を増やしてきた。「Asana」はアメリカ西海岸のスタートアップ企業を中心に導入されており、現在では世界に13万社以上の顧客を抱えるまでに成長した。

「Asana」では、タスクの優先順位や期限はもちろん、進捗状況をつねにメンバー全員が把握できる。効率が上がるのはもちろん、不透明な仕事がなくなってモチベーション維持にも役立つ

アメリカで生まれたAsanaだが、日本企業においても、以前から強いニーズがあったという。日本語版のリリースは2018年だが、13年ごろから日本企業が英語版のAsanaを有料で活用するケースが急増。今では、大企業から中小企業まで約1500社が有償プランを利用している(20年4月時点)。

それほど好評を博している「Asana」は、多々存在するプロジェクト管理ツールとどう違うのか。「さまざまな業務用アプリケーションと連携し、Asana1つであらゆる仕事を遂行できるというのがいちばんの特徴です。誰がどの仕事をいつまでにやるかが明確化され、不透明な仕事がなくなります。毎日膨大な数のメールをさばくなどの『仕事のための仕事』からも解放され、もっと本質的なタスクに集中できるようになります」と、田村氏は胸を張る。

さらに、仕事を進める中で発生するコミュニケーションが明らかになるのもメリットだ。「これはメンバーの働きがい、モチベーションを高めることにもつながります。業務の進捗について上司にわざわざホウレンソウ(報告・連絡・相談)しなくても、Asanaを使って仕事をしていれば、自然にホウレンソウが出来上がっていくんです。また、適宜ほかのメンバーからのサポートやフィードバックも得られるようになっていて、職場に対する安心感、帰属意識が高まります」(田村氏)。

もちろん、PCに限らずスマホからも使用可能。気になるセキュリティーについては、Asanaの専門チームが安全性と機密性を保護する体制をとっている。導入企業では、業務効率が平均約45%向上しているほか、優れたアイデアをスピーディーに拾い上げて具現化できるようになったなどの声が寄せられているという。

田村氏は「Asanaは、マネージャーなど管理する側の立場にいる人だけでなく、ビジネスパーソン全員にメリットを生むツール」なのだと強調する。「おかげさまで一切の営業活動をせずに、口コミでここまで拡大してきました。有料アカウントの顧客に限っても、今も毎月100社以上のペースで増加している状態。当社は、ワークマネジメントのパイオニアだという自負があります。これからも、企業の労働生産性を上げることはもちろん、エンプロイーエンゲージメントの強化、ひいては『強い日本経済』を取り戻すことにも貢献していきたいですね」(田村氏)。

ワークマネジメントを的確に行うことで、各メンバーのパフォーマンスを正しく評価できるようになることはもちろん、適切で効率的な仕事の割り振り、中長期的な成果の判断もできるようになる。それにより上司と部下の信頼関係が強固になれば、エンプロイーエンゲージメントが高まり、人材の定着化、そして会社全体の利益向上につながっていく。

今なおたくさんの課題を残しているビジネスの現場に、一石を投じるAsana。導入によって労働生産性を上げられるのは当然のこと、自社が「働く場所」ではなく「働き方」そのものを変革できているか、見直す一助ともなるだろう。

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